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» 2012年11月09日 16時22分 公開

製品解剖:Appleの「iPad mini」を分解、A5プロセッサは32nmのHKMG技術で製造 (2/2)

[Allan Yogasingam,UBM TechInsights]
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プロセッサは32nm版の「A5」

 それではiPad miniの分解に取り掛かろう。まず、液晶ディスプレイを覆うタッチスクリーン用ガラスを取り外す。液晶ディスプレイの金属枠プレートを外すと、メインバッテリーとメインボードが見える。仕様によると、バッテリーの容量は16.3Wh(ワット時)で、駆動時間は10時間である。またAppleは、iPad miniが搭載するこのバッテリーについて、「現時点で最も薄いリチウムイオン電池だ」と主張している。ただしこのバッテリーの大きさは、iPadの第3世代機に搭載されているリチウムイオン電池とほぼ同じである。

 メインボードを見ると、相変わらずAppleは各種半導体のパッケージに自社ブランドの刻印を施しており、当社のような技術調査会社が半導体チップの供給ベンダーを特定しにくくなっている。ベンダーを確認できた主要なチップは、メモリやアプリケーションプロセッサ、センサーなどである。

 アプリケーションプロセッサは、前述の通りAppleのA5であり、Samsung Electronicsが製造を請け負っている。製造プロセス技術は32nm世代だ。歴史を振り返ると、A5の搭載が最初に確認されたのは、Appleの第3世代の「Apple TV」だった。当時はシングルコアプロセッサのチップだったが、今回iPad miniに搭載されていたチップはデュアルコア構成のものである。

 なお、32nm世代のデュアルコアA5は、iPad 2にも搭載されていた。iPad miniに搭載されているA5は、ゲートファースト方式の高誘電率/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal Gate)技術を適用して製造されており、ダイの寸法は69.7mm2、厚さは110μmである。

アプリケーションプロセッサ「A5」のダイ写真 アプリケーションプロセッサ「A5」のダイ写真 32nm世代の半導体プロセス技術で製造したもの。配線層を捉えたところだ。出典:UBM TechInsights
32nm版「A5」のダイ上の刻印 32nm版「A5」のダイ上の刻印 出典:UBM TechInsights

主要部品はおなじみのベンダー

 Appleは以前から、同社の製品に部品を供給する半導体ベンダーと強固な関係を構築しており、機種が変わっても取引を継続する傾向があった。iPad miniも例外ではない。例えばBroadcomは、iPad miniでも引き続き主要部品のデザインウィンを獲得している。

 具体的にはBroadcomは、3つの主要部品を供給している。そのうち2つは、タッチスクリーン制御ICである。同社のタッチスクリーン制御IC「BCM5976」はiPadの第3世代機と、ノートPC「MacBook Air」、スマートフォン「iPhone 5」に搭載されており、iPad miniではそれが2つ使われていた。3つのうち残る1つは、IEEE 802.11a/b/g/n規格の無線LANに加えて、Bluetooth 4.0+HSとFM受信の機能を統合した無線コンボチップ「BCM4334」である。これは、iPhone 5の他、Samsungのスマートフォン「GALAXY S III」にも搭載されていた。

Broadcomの無線コンボチップ「BCM4334」 Broadcomの無線コンボチップ「BCM4334」 ダイに刻まれた型名を拡大したところ。このチップは、村田製作所が供給するモジュールの中に収められている。出典:UBM TechInsights

判断を下すのは消費者

 iPad miniのハードウェア仕様を眺めると、なぜAppleがRetinaディスプレイの採用を見送って、アプリケーションプロセッサにA5よりも高性能な「A6」や「A6X」を搭載しなかったのかと疑問に感じるかもしれない。

 これは同社が、次期モデルとして例えば「iPad mini 2」を企画しており、そこで今回のiPad miniからの改良点として打ち出せるようにとっておいたのだろうか。あるいは、そうした高性能の部品を使うとバッテリー駆動時間を十分に確保できず、Apple製品は電池の持ちが悪いという印象を与えかねないという設計上の判断だったのだろうか。

 設計の観点では、iPad miniはAppleの従来通りの設計手法にのっとっている。7インチタブレットに対する消費者の要求が高まり続けていることを受けて、それに応えられると自らが考える製品を作り出す設計手法だ。iPad miniは、悲観的に捉えれば、サイズがiPad 2の半分しかないデバイスだが、楽観的に見れば、同社のメディアプレーヤー「iPod touch」を超大型にしたものだといえる。329米ドルの価格が適切かどうか。その判断は消費者が下すことになる。

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