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» 2012年12月10日 09時00分 公開

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(11):英語の文書作成は“コピペ”で構わない (2/6)

[江端智一,EE Times Japan]

マニュアルの“初版”を完成させよう

 まずは英語の製品マニュアルを例として、英語の文章の作成方法を説明します。

[ステップ1]ベースとなる公知の英語文献の調査

 英語の文献調査については、第8回第9回で説明しましたが、今回の文献調査は、その趣旨が異なります。文献の内容など全然分からなくても結構です。

 まず、同じ種類の製品の英語マニュアルを集めます。例えば、あなたが電子レンジのマニュアルを作成するなら、英語で記載された電子レンジのマニュアルを集めて下さい。日本製の電子レンジの英語マニュアルであれば申し分なく、自社の旧バージョンのマニュアルなら、もう勝ったも同然です。

写真はイメージです

[ステップ2]ベースとする公知の英語文献の選定

 集めた全ての製品マニュアルに目を通します。基本的にはマニュアルの目次だけに目を通せば十分です。今回の場合は、他社の電子レンジと自社の新製品の電子レンジの「機能」が似ているものであれば、それを採用すれば良いでしょう。

[ステップ3]コピペ

 そのマニュアルのテキストの全文をコピーして、ワープロソフトなどにペーストします。

[ステップ4]リプレース

 マニュアルに記載された他社の製品名を、ワープロソフトなどの一斉変換の機能で自社の製品名に置き換えます。例えば、“ABC-refrigerator(ABC冷蔵庫)”を、“EBATA-refrigerator(エバタ冷蔵庫)”などに変換するということです。

 おめでとうございます。これでマニュアルの初版が完成しました。

 ……いえ、全くふざけていません。至極真面目な話をしています。

使い回せるものは利用する

写真はイメージです

 私がここで申し上げたいことは、2つあります。第1は、既に出来上がっているものがあるなら、それを使わせていただこうということです。第2に、最初から完璧を目指すことはやめましょう、ということです。

 では第1の話から始めていきたいと思います。

 家を建てることを考えた場合、「地鎮祭→地盤改良→基礎工事→上棟」というプロセスが必要ですが、そのプロセスを使い回しできるのであればそれを利用して、自分はいきなり「内装」から始めて構わないということです。

 だいたい、冷蔵庫などの家電製品のマニュアルであれば、

  1. Safety instruction(取扱注意事項)
  2. Introduction(製品紹介)
  3. Feature(本製品の特徴)
  4. Basic operation(基本的な使い方)
  5. Other operation(その他の使い方)
  6. Maintenance(お手入れの方法)
  7. Reference(参照)
  8. Troubleshooting(故障かなと思ったら)
  9. Warranty(保証)
  10. Contact information(ご相談窓口)

というふうに構成は決まっており、記載すべき内容もだいたい同じようなものになります。

 それらを丸ごと頂きましょう。このような構成(章、項、節)でオリジナリティを出すことにメリットはありませんし、読み手であるユーザーにも迷惑をかけることになります。下手なオリジナリティは、自分にも他人にも迷惑となることを覚えておきましょう。

※なお、このような、いわゆる「コピペ戦略」における著作権法上の問題についての見解を、付録2に記載しました。ご一読ください。

 もちろん、初版といっても、コピペしただけの、こんなマニュアルが使えるわけがありません。この後に多くの修正作業が入ることになるので、ここからが実体的な作業だといえるでしょう。

単語や熟語は“As Is”で使用する

[ステップ5]図面の作成

 前回のプレゼンテーション編でもお話しましたが、図面があれば英語の記載量を減らすことができます。細かい説明は、全て図面に押しつけてしまえばよいからです。

 また、図面を記載する場合、どのような図面を作成すべきかについても、ベースとなった資料に記載された図面を参考にすればよいのです。なぜなら、そのマニュアルの作成者がその図面を作成したのは、その図面が有効であると考えたからです。

[ステップ6]文章の修正

 さて、ここからは、自社の製品に適合するように文章を徐々に修正していきます。ここで大切なのは「徐々に」ということです。「一気に」手直ししてはなりません。

 具体的には、

(1)新規のセンテンスは追加しない
(2)使われている単語や熟語は「そのまま(As Is)」使用する
(3)やむなくセンテンスを追加する場合でも、単語を含めて文章のスタイルを変更しないようにする

などに気をつけてください。コピペ原本の作風や、単語や良い表現までも一気に消してしまう可能性があるからです。

 例えば、電子レンジという言葉だけでも、“electronic oven”、“kitchen microwave”、“microwave”、“microwave oven”、“nuker”、“pinger”などがありますが、引用したマニュアルで使用されている単語に従うことが必要です。その文献の分野(今回でいえばマニュアルの分野)では、使われる用語はユニーク(一意)に決まっている場合が多いからです。

 複数のサブシステムから構成されるシステムのことを「分散システム」と言います。英語では“decentralized system”、“dispersed system”、“scattering system”など、いずれの表記も完全に正しいのですが、“distributed system”と表現されることが多いです。なぜかと問われれば、「そういうものだから」としか答えようがありません。

 ですから、ベースとした英語文献の記載には、「まずは疑問を挟まないで黙って倣う」が正解です。

 なお、他社の輸出向け日本製品の英語マニュアルがあったら、さらにラッキーです。日文と英文を対比できるからです。

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