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Spansionが組み込み向けフラッシュ事業を加速、2年間で顧客数を倍増へビジネスニュース 企業動向(1/2 ページ)

NOR型フラッシュメモリ大手のSpansion(スパンション)は、3年ほど前から組み込み機器の市場にフォーカスした事業を展開してきた。高い信頼性と堅牢性を実現したフラッシュメモリ製品と技術サポート力で、さらなる顧客数の拡大を狙う。

» 2013年01月18日 16時10分 公開
[馬本隆綱,EE Times Japan]

 NOR型フラッシュメモリの大手メーカーであるスパンションのジョン・キスパート(John Kispert)CEO(最高経営責任者)は2013年1月17日、東京都内で記者会見し、今後の事業方針や技術戦略を明らかにした。この中でキスパート氏は「製品の信頼性と堅牢性で競合他社との差異化を図りつつ、自動車や産業機器などの組み込み用途にフォーカスした戦略を進めてきた。それに加えて、アプリケーションを熟知した当社のエンジニアが顧客との連携を強めながら、メモリに関する問題解決にあたっていきたい」と述べた。

ジョン・キスパート氏 スパンションCEOのジョン・キスパート氏

 スパンションは、約3年前にフラッシュメモリの事業方針を大きく転換した。携帯電話機向けなどコモディティ製品での競争を避け、組み込み機器に向けたフラッシュメモリに注力していくことを決断した。特に重要なターゲットとして狙うのは、自動車や産業機器、ネットワーク機器、ゲーム機器、エンタープライズ、高性能コンスーマ機器などの用途である。このため、単にフラッシュメモリチップを供給するだけでなく、関連するファームウェアや高度な技術サポートも含めて、「他社に追従できない高いレベルのソリューション提供」を基本戦略に据えた。

 スパンションは事業基盤となるIP(Intellectual Property)や先端技術、それらを駆使して開発したハイパフォーマンスな製品の供給に力を入れてきた。「用途や顧客のニーズに応じて2年間で24の新製品を投入した。つまり、ほぼ1カ月に1個のペースで製品を出してきたことになる」(キスパート氏)。これらの新製品は、ビジネスユースから家電機器、輸送機器など、多彩なデジタル製品の仕様要求に対応したものだという。

“プログラマブルシステムソリューション”を新たな成長エンジンへ

 次に示す図は、スパンションにおけるこの1年間の戦略の進化を示したものである。これまで同社の事業で中心になってきたのは、組み込み市場向けのNOR製品とNAND製品である。さらに、これからの成長を加速すると期待しているのが、図中に水色で示された“プログラマブルシステムソリューション”と呼ぶ領域だ。このカテゴリーにはSoCベンダーに対するライセンシング・ビジネスと、マイコンを組み込んだメモリ製品がある。

図1 “プログラマブルシステムソリューション”と呼ぶ領域が、これからの成長を支えるエンジンとして加わる。出典:スパンション

 付加価値を生み出すプログラマブルシステムソリューションの一例が、2012年7月に発表した自動車向けの音声認識コプロセッサ(参考記事)である。この音声認識コプロセッサ「アコースティック・コプロセッサ(ACP)」は、Nuance Communicationsの音声認識ソフトウェア「VoCon」と、スパンションの高速フラッシュメモリ技術「MirrorBit」を融合した製品である。この製品を活用すれば、これまでメインプロセッサにかかっていた処理負荷を半減することができるという。第1弾の製品は音声認識の用途だが、「次はジェスチャや顔の認識といったアプリケーションも視野に入れて開発している」(キスパート氏)という。顔認識技術をテレビ受像機に応用すれば、エンドユーザーがテレビの前に座るだけでいつも視聴している幾つかのテレビ番組表を画面に表示させることができる。そのリストの中から、見たい番組を選択して視聴することも可能になる。スパンションは製品戦略として、このようなプログラマブルシステムソリューションを新たに加えることで、今後の持続的成長を確保していく考えである。

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