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» 2013年02月18日 09時00分 公開

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(14):海外出張に行くあなたは、「たった一人の軍隊」である (4/6)

[江端智一,EE Times Japan]

次なる難所は、税関

 大抵の場合、この入国審査を通過すれば「勝った」と思ってしまうものです。ただし、本当にレアケースではあるのですが、ここで油断すると、ひどい目に遭うことがあります。

 税関手続きです。

 エンジニアの出張であれば、外国の展示会や打ち合わせに必要な道具(計測機器)、製品、または製品のプロトタイプを持ち込むことが少なくないと思います。

写真はイメージです

 このような場合、(1)日本から出国、(2)外国に入国、(3)外国から出国、(4)日本に再入国の、合計4回の通関手続きが必要です。もちろん、税関の対象とならないモノであれば、別に何もしなくても違法ではありません。いらんことを申告せずに、とっとと空港から脱出するのが正解です。ですが、税関の役人はプロです。彼らは、「面倒に巻き込まれたくないな」と考えるわれわれの表情を読みとることにかけては、超一流です。

 私が学生の頃、まだインターネットは存在せず、また今のレベルほどに、性表現が開放的でなかった時代、海外の「主に性的な娯楽要素を扱う分野の書籍および雑誌(「エロ本」ともいう)」は非常に希少価値を持っており、アホな男子学生の間では、売り手市場の取引が簡単に成立したものです。

 昔から、体を張って実験することを常としていた私は、学生時代の海外旅行において、この「主に性的な娯楽要素を扱う分野の書籍および雑誌」を1冊のみに限定した密輸を、実験的に「隔回ごと」に実施していました。

 そして、その場合に、私が成田空港の税関で荷物チェックを受けるヒット率は100%でした。これは「脅威の検出率」とも、または私が簡単に表情を読まれてしまう「大根役者」であるとも解釈できます。

 いずれにしても、幸いなことに、これまで発見→没収に至ったことはありません。私も素人なりの工夫をこらしていたのです。ただし、スーツケースの荷物を全てぶちまけなければならない場所に隠す程度の浅知恵でしたが。

 それはさておき。

 海外においても同様です。「面倒に巻き込まれたくないな」というわれわれの表情を、税関の役人は簡単に見破ります。スーツケースを開けさせ、適法なプロトタイプ製品を発見し、そして、問います。

 ――「これは、何だ?」と。

 パンフレットを何通送っても、メールを何十回送っても、全然分かってもらえない顧客に、その「『これは何だ』を説明するため」に、私たちは泣く泣く異国の地まで来たのです。それを、その分野においては完全に素人の税関の役人に、今ここで説明しろと?「もう勘弁してくれよ」と、血の涙を流しながら、その場に崩れ落ちそうになります。

 その質問の内容が、これまたすごい。

  • これは、我が国の基準を超える、必要以上に強い暗号プログラムが使われていないか
  • これは、軍事転用が可能な技術が含まれていないか
  • 我が国の反体制勢力の手にこれが渡った場合、テロに使われる可能性はないのか

 ――そ・ん・な・こ・と、私・の・知・っ・た・こ・と・かっ!


と思っても、口に出してはいけません。役人を怒らせると面倒だからです。

 もちろん、あなたが適法な製品を輸入しているのは、その役人も薄々分かってはいます。日本人は、国際法を順守することにかけては“世界的優等生”ですしね。それと同時に、日本人は、外国人の前では、とっても卑屈になることも、国際的に知られています。彼らの職務実績に貢献するために、われわれ「英語に愛されないエンジニア」などは、鴨がネギをしょって、加えてコンロと鉄鍋まで持参してきてくれるくらい、ありがたいお客さんでもあるのです。

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