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amsが分散型パワーステージを実現する電源管理ICを開発――スマホでのシェア向上狙う電源設計

amsは、高集積型電源管理IC(PMIC)として、パワーステージ(パワートランジスタ部)を簡単な配線で外付けできる製品を開発した。PMICと離れたアプリケーションプロセッサ近傍にパワーステージを設けることができ、発熱を抑えられる。「無駄なパワーステージを持つ必要もなくなり、コスト面でも最適化できるソリューション。この画期的なアーキテクチャで、モバイル機器向けPMICのシェアを一層、高めたい」(同社)。

» 2013年07月04日 18時50分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

  amsは、センサー/センサー周辺アナログIC、ワイヤレス関連デバイスと並ぶ主力事業として高性能アナログIC事業を展開する。パワーワイヤレスビジネスユニット担当ジェネラルマネージャ兼シニアバイスプレジデントのKambiz Dawoodi氏は、「高性能アナログIC分野は、われわれよりも規模の大きい競合メーカーが複数存在する。しかし、それら規模の大きな競合に対抗したハイパフォーマンスな製品を投入し、近年、競合を上回る成長を遂げ、トップクラスの高性能アナログメーカーとなりつつあると自負している」と述べる。

 「低消費電力/高効率、低ノイズ、高精度を兼ね備える高性能アナログICを追及するため、設計技術力とともに、低ノイズトランジスタの実現を目指した製造プロセス技術の追及を行っている。そのため自社工場への投資も積極的に行っている」と付け加える。

高シェアのスマホ用LED駆動IC、MEMSマイクに続き、PMICも強化

 特にamsの高性能アナログIC事業が強さを発揮している市場が、モバイル機器市場だ。Dawoodi氏は、「スマートフォンであれば、スマホメーカー上位12社のうち、10社が当社の高性能アナログICを採用している」とし、スマホ用LEDフラッシュ駆動ICで世界シェア40%、MEMSマイクで同65%を獲得していると主張する。

 2002年から展開しているPMICは、簡易型ナビゲーションシステムや電子書籍端末、携帯型音楽プレヤーなどのモバイル機器分野で強さを発揮してきた。Samsung Electronicsの中国向けスマホなどに採用されるものの、LEDフラッシュ駆動ICやMEMSマイクに比べるとスマホでの実績は少ない。

 Dawoodi氏は、「今回のPMICは、業界でも初めてに近いアーキテクチャを用いた製品であり、新製品をきっかけにして、スマホを含めたPMIC市場でのシェア拡大につなげたい」と意気込む。

PMIC「AS3721」の概要 (クリックで拡大) 出典:ams

 その新しいPMIC「AS3721」の最大の特徴は、アプリケーションプロセッサのCPUコアに対する電源供給用パワーステージを外付けするアーキテクチャを実現した点にある。従来のPMICは、高集積性を追及しPMIC内に比較的大きな出力電流を要するプロセッサのCPUコア供給用のパワーステージを内蔵した。そのため、電力の伝送損失などを避けるなどの理由により、PMICはプロセッサ近くに配置せざるを得ず、発熱しやすいプロセッサ、PMICが1カ所に集中し、高度な熱対策が必要になった。

 プロセッサコアに対するパワーステージを外付けにすることで、PMICとプロセッサを離すことができる他、プロセッサ近くのパワーステージも分散配置できるため、デバイスの集中による発熱の増大が避けられ、熱対策が容易になる。

 「パワーステージを外付けするコンセプトのPMICは以前からあり、競合メーカーが一部製品化したが、PMICとパワーステージを制約の多い4〜5本の配線が必要になるなど、実用的でなかった」という。AS3721は、各パワーステージとそれぞれ3本の配線(制御信号用2本、温度信号用1本)で接続でき、「配線の制約も極めて少ない」とする。

パワーステージ「AS3729」の概要 (クリックで拡大) 出典:ams

 amsは、AS3721に対応するパワーステージとしてAS3729を用意。AS3729は、PチャンネルMOSFET、NチャンネルMOSFETを2組(2相)を備え、1デバイス当たり5A(2.5A×2相)の電流出力に対応。AS3721には、AS3729を4個制御できるDC-DCコントローラを備え、CPUコアに対し最大20Aへの電流を供給できる。

 「これまで、CPUコアに5Aや10Aの電流供給だけで足りる場合でも、15Aや20Aの電流供給能力を持つ余剰なPMICを使わざるを得ないケースも多かった。新製品では、パワーステージの数を調整して最適化できる。場合にもよるが、PMICのコストを50%程度削減することも可能になるだろう」(Dawoodi氏)とする。

8相20A出力時の構成例 (クリックで拡大) 出典:ams

「Tegra」に最適化するが「他のプロセッサにも」

 なお、AS3721は、NVIDIAのプロセッサ「Tegra」に最適化したPMICとして開発され、同プロセッサの評価ボードに搭載されるが、「パワーステージをフレキシブルに選択でき、高速負荷応答性などPMICに求められる各種要件を満たしているため、他のプロセッサでも十分に使用できる」(Dawoodi氏)としている。

 高速過渡応答性能は最高12A/μs。最大スイッチング周波数は3MHzで外付けインダクタを小型化できる。AS3721は、8mm角サイズ、ピン間0.5mmのBGAパッケージを採用。パワーステージのAS3729は、1.6mm角サイズ、ピン間0.4mmのWL-CSPパッケージを採用している。両製品とも既にサンプル出荷を開始している。

左は過渡応答特性のイメージ。右は、温度特性のイメージ (クリックで拡大) 出典:ams

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