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“着られる電子機器”の登場も? 期待が高まるウェアラブルコンピュータビジネスニュース オピニオン(1/2 ページ)

意外に古い歴史を持つウェアラブルコンピュータだが、その注目度が一気に高まったのは「Google Glass」によるところが大きい。実用化はまだ先になると予想されるが、導電性の繊維を開発しているメーカーもあり、将来的には文字通り“着られる”電子機器が登場する可能性も高いだろう。

» 2013年07月08日 13時52分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 ウェアラブルコンピュータは、次世代のヒット商品になるだろう。ただし、Appleの「iPhone」に代表されるハイエンドスマートフォンがウェアラブルな形に進化するには、あと10年はかかると思われる。ウェアラブルコンピュータで一歩先を行っているのは、「Google Glass(Project Glass)」で飛躍を狙うGoogleである。Google Glassは魅力的だが、成功する保証はない。しかし、少なくとも、Google Glassのプロトタイプの開発プロセスをあえて公にするという手法を取っているのは面白い取り組みだ(関連記事:「Google Glass」にまつわる11の覚書)。

 筆者は、イーサネット技術関連のイベントで、コンピュータ業界のベテラン技術者であるGordon Bell氏と非公式に会談する機会を持った。同氏は現在、Microsoft Researchでフィールド調査を担当している。Bell氏は、「ウェアラブルコンピュータでは、顔認識と医療センサーがキラーアプリケーションになるだろう」と述べている。

 Bell氏は研究プログラムの一環として、どこへ行く時もモバイルカメラを装着しているという。「ウェアラブルコンピュータは記憶の助けになる。重要な役割を担うのが顔認識機能だ」と主張する。

 だが皮肉なことに、Google Glassの責任者は、「現在の製品計画では、顔認識機能を搭載する予定はない」と述べている。これはプライバシー問題に配慮しての発言だと思われるが、顔認識技術がまだ開発の初期段階にあることも関係していると考えられる。

 次世代のウェアラブルコンピュータでは、高精度な顔認識サービスの開発と、プライバシー問題に関する懸念を払しょくする方法を見つけることが必要だ。だが、この2つは非常に難しい問題だ。

 顔認識で不特定多数の人を正しく認識するには、技術的課題が多い。日常的な環境の中で、家電レベルのカメラを使ってデータを収集する場合は、特に難しい。顔認識システムのデータを無線ネットワークでやり取りすることになると、技術的なハードルはさらに上がる。

ヘルスケア分野もキラーアプリに

 ウェアラブルコンピュータは、ヘルスケア機器にも革新をもたらすだろう。ベルギーの研究機関であるIMECをはじめとする複数の研究チームは長年、人体無線網(BAN:Body Area Network)の研究に取り組んでいて、着実に成果を挙げている。

 Bell氏は現在、Fitbitの心拍モニターを装着している。同氏は、腕時計のように装着できる心拍センサーなどの開発を手掛けるBobo Analyticsをはじめ、ウェアラブルなヘルスケア機器に特化した複数の新興企業への投資も行っている。

 同氏は、「心臓の専門医以外でも手軽に心拍数などをモニタリングできるような、簡易なヘルスケア製品が必要だ」と強調する。

 Bell氏ら研究者は、人々の健康状態を常時モニタリングし、クラウドサービスを利用してモニタリングしたデータを分析し、健康上の問題を報告したり予測したりするような未来を見据えているという。

 ここで再び、技術的な課題や法規制の問題が浮上してくる。例えば、衣服やアクセサリに簡単に装着できるセンサー機器は、身体の内外のノイズの中で、正確にデータを収集できるように精度を向上させなければならない。法規制の面では、オバマ政権の医療保険制度改革(オバマケア)などに関する議論も噴出すると思われる。

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