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もう計測器にマニュアルなんていらない! ケースレーが新開発コンセプトを発表テスト/計測

ケースレーインスツルメンツは2013年8月28日、ユーザーの利便性を追及する新たな製品開発コンセプトを発表し、同コンセプトをベースに開発した第1弾製品として、ソースメジャメントユニット(SMU)「2450型」を発表した。SMUとして「世界初」という静電容量方式タッチパネルを搭載し、「直感的なユーザーインタフェース(UI)であり、初めて新製品を触る人でも、マニュアルなしに5分程度の時間で操作できる」(同社)とする。

» 2013年08月28日 16時30分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 ケースレーインスツルメンツ(以下、ケースレー)は、2010年に同じ米国に本社を置く計測機器メーカー「テクトロニクス」に買収され、テクトロニクスとグループを形成して事業を展開している。テクトロニクスとケースレーの日本法人に当たるTFFの代表取締役を務める米山不器氏は、「両社は同じ計測機器メーカーながら、絶妙な補完関係にある。テクトロニクスは、AC/動的特性を測る分野に強みを持ち、一方でケースレーはDC/静的特性の分野を得意としている。日本国内でも、以前から販売特約店が同じケースが多く、双方の製品を販売するクロスセリングが行いやすく相乗効果が多く見込める。“1+1=2”ではなく、相乗効果で“1+1=4”を狙っている」と語る。

テクトロニクスとの相乗効果も生かして新コンセプトを構築

テクトロニクスとケースレーの日本法人に当たるTFFの代表取締役を務める米山不器氏

 そして米山氏は、「今回、テクトロニクスの経験、ノウハウも生かしながら、ケースレーの製品設計哲学を構築した。この哲学に基づいた第1弾製品は、まさに両社の相乗効果で生まれたものだ」とする。

「Touch」「Test」「Invent」

 ケースレーが「今後、全ての新製品に適用させる」という新設計哲学は、「Touch」「Test」「Invent」の3つの考え方からなる。TFFマーケティング部マーケティングマネージャの宮尾豊氏は、「われわれのグループでは、顧客視点の経営を重視している。そこで今回、ユーザーの声を徹底して調査した。その結果、“よりUIの利便性を高めてほしい”という声が多く、その結果から、Touch、Test、Inventという3つのコンセプトを打ち出した」と説明する。

ケースレーの新しい製品設計哲学 出典:ケースレーインスツルメンツ

「Touch」「Test」「Invent」

 Touchは、タッチパネルのUIを製品に導入し、直感操作を実現するという意味を、Testには精密なテスト/測定の結果をすぐに確認できるという意味を含める。Inventは、Touch/Testの結果、削減した測定時間をユーザーに有効活用してもらう、という考えを表す。Touch、Test、Inventというコンセプトを徹底することで、ユーザーの利便性の最大化を狙う。

「世界初」の静電容量タッチパネル搭載ソースメーター「2450型」

新製品設計哲学に基づき開発した第1弾製品ソースメジャメントユニット「2450型」。デザイン面もこれまでから一新した

 この新しい設計哲学「Touch、Test、Invent」を具現化したのが、ソースメジャメントユニット(SMU)の「2450型」だ。電流/電圧源と電流/電圧計が一体となった計測器であるSMUとして、「世界初」(同社)という静電容量式タッチパネルを搭載した。従来製品では前面パネルに28個のボタンがあったが、2450型ではそのほとんどがタッチパネルに集約された。各種計測の設定は、タッチパネルに表示される指示に従って行くだけで、ボタンによる設定時には不可欠だったマニュアルを見ずに、簡単に設定可能だ。「設定項目も順に表示されるため、設定忘れなどもない。測定までの準備時間は従来の1/3〜1/4程度に短縮できるだろう。基本的な測定であれば、初めての人でも5分程度で測定を開始できる」(宮尾氏)。

「2450型」で強化された操作性向上、測定時間短縮に向けた機能例 (クリックで拡大) 出典:ケースレーインスツルメンツ

 利便性向上に向けた新機能はタッチパネルだけではない。5型の大型液晶を採用し、ディスプレイに表示される文字サイズも従来比2倍に拡大し、視認性を追求。各操作画面にはヘルプ情報表示ボタンがあり、万一、操作に迷ってもマニュアルを開く必要がない。現時点では、ヘルプ情報は英語表示のみだが「日本語対応を行う予定」(宮尾氏)とする。

電流レンジ最小10nA、電圧レンジ20mV

 UI部分以外にも、SMUとしての基本性能などの向上も図った。SMUで最も重要な電圧、電流レンジを拡張。電圧レンジは20mVレンジ、電流レンジは最小10nAとなり、高感度測定機器の追加が不要になった。さらに、従来SMUでは、アダプタなどを介して装着しなければならなかった高感度測定用のトライアキシャルコネクタを標準装備。アダプタ部での損失などを考慮せずに高精度な測定が簡単に行える。低電流レンジのセトリング時間も短縮し「競合品に比べ最大15倍速く安定化され、測定時間が短縮できる」という。複数の計測器と同期動作させるためのユニット間通信バス「TSP-Link」も搭載し、拡張性も持つ。

 自動テストプログラム作業をより容易にする機能やツールの強化も実施した。外部PCを必要とせずに、前面のタッチパネル画面で、最大255ステップまでのテストフローを設定できるトリガシステムや、テストプログラムを機器内メモリに格納して外部PCなしに実行する「TSP」などの機能を搭載した。

「2450型」で搭載されたプログラム関連機能の例 (クリックで拡大) 出典:ケースレーインスツルメンツ

ソフトウェアも刷新

 外部PCを使った本格的なテストを実施するためのソフトウェアも刷新。新しいソフト「KickStartスタートアップソフトウェア」は、プログラムの必要のないソフトウェアでデータの取り込み、グラフ表示が簡単に行える。複雑な解析が必要な場合は、データを保存した後、Excelなど他のソフトウェア環境のファイル形式で出力できる機能を持つ。宮尾氏は、「従来のソフトウェアは、製品ごと、製品シリーズごとに異なったが、KickStartは、全てのケースレー製品に共通のソフトウェアとして展開していく。今後の新製品だけでなく、従来製品への対応も進める」とする。

 2450型は2013年8月28日から販売を開始し、価格は61万6000円(税別)。前面パネルがないバージョンもあり、価格は57万8000円。LEDや太陽光パネル、電子部品、バッテリーなど幅広い分野での需要を見込んでいる。

 ケースレーでは、「ソースメーター以外の製品にも、Touch、Test、Inventのコンセプトを導入し、2450型のようなタッチパネル搭載型の新製品を順次投入していく」としている。

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