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» 2013年11月07日 12時50分 公開

いまどきエンジニアの育て方 ―番外編―:百戦錬磨のエンジニアに聞く、“コスト意識をどう身に付ける?” (2/3)

[世古雅人,カレンコンサルティング]

“コスト意識”、どう身に付けさせる?

 開発現場を取り巻く状況は変わりつつあり、コストを意識することは確かに難しくなっている。だが、だからといって何の手も打たないわけにはいかない。Aさんや、Aさんが勤めるX社は、エンジニアに“コスト意識”を持たせるために、実際にどのような取り組みを行っているのだろうか。

【1】“仮想プロジェクト”で原価を意識させる

 X社では、新入社員教育を経て部門に配属された後は、入社5年くらいまでのエンジニアを対象に、教育プログラムの一環として、「原価に対する教育」を行っている。ただし、配属後の教育であるので、全ての部門で画一的に実施しているものではない。あくまでも部門単位の教育であり、部門責任者の裁量に委ねられる。

画像はイメージです

 例えばAさんは、チームごとに仮想会社を設立させ、サイコロを作らせた。企画、開発、製造、販売まで視野に入れ、定期的に最新製品の製造原価を報告させることで“原価意識”を持たせたという。こう書くと簡単だが、そうたやすく実行できるものではないことは、読者の皆さんもお分かりだろう。エンジニアが、製造部門の原価まで把握することは、普通ではあり得ないからだ。

 Aさんは、このように“仮想プロジェクト”を設けて、半年間、開発メンバー全員に繰り返しゼロベースでアーキテクチャを設計させた。もちろん、この仮想プロジェクトと並行して、本物の製品開発プロジェクトも進んでいる。並大抵の取り組みではないのが分かるだろう。

 Aさんの狙いは、原価意識を持たせること以外に、既存設計を流用せずにゼロから開発/設計させることにもあった。Aさん自身にも「もう設計の流用はしたくない」という思いはあったが、それ以上に、ゼロからアーキテクチャを設計させることで、エンジニアに自信をつけさせたいという狙いがあった。つまり、Aさんは仮想プロジェクトを行うことで、原価意識と人材育成の両方を行ったのである。

 Aさんが独自に取り組んでいるものは、他にもある。なかなか興味深いので、いくつか紹介しよう。

【2】原価の見張り番

 プロジェクトリーダーのサポート役として「原価の見張り番」を置く。原価の見張り番は、コストを把握していて、例えば開発メンバーから「ここを、こう変更したい」という話が出たら、「変更することに対して、原価の見張り番はどう思う?」と尋ねるという。“常に、原価の見張り番に尋ねなければいけない”とメンバーに意識させることで、自然にコストを意識させる仕組みだ。

【3】製品コンテスト

 先述した仮想プロジェクトの一環と考えられるかもしれないが、製品開発コンテストを行う。ルールは「予算は5万円以下」「開発期間は6カ月」「プロジェクトリーダーはチームの最年少。最年長は一番下っ端」、これだけである。この取り組みは、コスト意識だけでなく、若手のリーダーシップの育成にも役立った。メンバーからはかなり評判がよく、実際の製品に生かされたアイデアも生まれたそうだ。

【4】皆で話し合える開発環境作り

画像はイメージです

 Aさんが現在取り組んでいるのが、これだ。具体的には、製品システムのアーキテクチャを考えるワーキンググループを運営している。「製品システム全体を見渡せる人材」の育成を目的としている。

 全員がアーキテクチャを理解し、製品システム全体を見渡すことができれば、開発効率が上がり、原価を下げることができ、設計力と開発力も向上する――。それを狙った、欲張りな取り組みでもある。

 各部門の代表者がアーキテクチャのベースを作り、製品ごとのプロジェクトリーダーとメカ、電気、ソフトのリーダーが集まり、互いのアーキテクチャを理解し、部品の共通化や設計の共通化、流用や原価低減をとことん考える。ワーキンググループは定期的にミーティングを実施し、レビューを行っているという。このレビューは、新製品だけでなく、既存製品も対象だ。Aさんが最も重視しているのは、「製品開発に関わる人間が、自由闊達(かったつ)にものを言えて、話し合うことができる環境作り」だ。Aさんは、そのための“場と仕組み”を提供しているのである。

 Aさんは、「個々のアーキテクチャを構造的に見渡すことができるようになると、絶対にコストは下がる」と言い切る。ワーキンググループはまだスタートしたばかりだが、この取り組みが、安くても良質な製品を提供できるモノづくりの仕組みを作るきっかけになれば、とAさんは語る。

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