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» 2013年11月15日 10時30分 公開

“AI”はどこへ行った?(4):AI活用の本命はビッグデータなのか? (2/3)

[世古雅人,カレンコンサルティング]

非構造化データの解析とAI

 ご存じのように、ビッグデータが注目される背景は、大量のデータそのものに価値を見出すのではなく、これをいかにうまく解析して新たな価値を創出できるかである。特にソーシャルメディアから発信される無数のテキスト/音声/画像などのデータや、GPS位置情報やさまざまなセンサーを使った“M2M通信(Machine to Machine)”から生まれるデータといった、「非構造化データ(Unstructured Data)」が、今、最もホットな“ソフト型のAI”の舞台となっている。

 非構造化データは爆発的に増加している。“非構造化データそのものがビッグデータ”と言い切ってしまっても過言ではない。これらを解析するためには、AIの持つ「自然言語処理」「画像認識」「音声認識」「機械学習」などの高度な技術が必要になるのである。

 Apple、Google、FacebookなどのIT企業をはじめ、欧米や日本の大手企業がこぞって次世代のビジネスにはAIが欠かせないと判断している最も大きな理由は、彼らがユーザー・購買者の行動特性や記録・ログなどのビッグデータ争奪戦で優位に立ちたいからだ。ユーザーの購買履歴、PCやスマートフォンによる検索結果といった膨大なデータを収集した企業は、人間の能力では処理しきれないデータ量を、AIの統計・確率的な手法により解析しようとしている。

 解析結果は、経営戦略やマーケティング戦略へと活用するだけではなく、“リコメンデーション*)”などの形でユーザーにもリアルタイムで還元される。データ量は増える一方なので、AIの進化をさらに促す。ネット上の情報が増え続ける限り、AIも学習を高め、AIの特徴の1つである「推論」により、ユーザーに返す価値や提供する情報が、よりユーザーニーズにマッチしたものに洗練されていく。

 このように、クラウドやソーシャルメディアの登場によって(もちろん、端末の高性能化、回線の高速大容量化といった要因もあるが)、企業が欲するビッグデータ爆発的に増え、それらの処理や解析を行うソフト的なAIも進歩しているのである。

*)ショッピングサイトで、「この商品を買った人は、XXも買っています」といった、ユーザーが興味のありそうな情報を表示する機能があるが、それが“リコメンデーション”の1つだ。

「AIの冬」

 筆者もそうであるが、古典的なAIを少しばかりかじった人間は、AIと聞くと、どうしても目に見えるハード的なものをイメージしがちだ。AI単体で人間の脳の機能を果たすとか、AIを搭載すれば人間に近いロボットができるとか、人間の役に立つことを想像する。

 今一度、AIの歴史をひも解いてみると、「AIの冬」と呼ばれる時期がこれまでに2度あった。第1期は1974年から1980年、第2期は1987年から1993年。この期間は、AIのさまざまな研究が鈍化したとされる。そして、第1期と第2期の谷間である1980年から1987年は「ブーム」であったのだ。第1回で述べたが、筆者がちょうど大学在学中で、AIに関心を持ち始めた時期がまさしくこの時期である。今となっては耳にすることが少なくなった「エキスパートシステム」もこの時代に生まれた。

 この「AIの冬」が終えんを迎えたのが1990年代後半だ。この時期、インターネットの普及とブロードバンド化が進んだ。やがてソーシャルメディアが登場し、ビッグデータが爆発的に増えたのは先に述べた通りで、再びAIが注目されるようになってきたのだ。

 この数十年で、コンピュータの性能は恐ろしいまでに上がり、さまざまなセンサー類も身近になった。インターネットも普及した。しかし、AI分野のロボットにおいては、いまだに“3歳児”のまま(第2回参照)で、あたかも研究が止まってしまったかのように思えることもまた事実である。本コラムタイトルでもある『“AI”はどこへ行った?』は、AIが、ハード的な要素よりもソフト的な要素が強いものへと移行している印象を表現したかったものだ。

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