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PCは低迷続くも、ワークステーションは堅調な伸びビジネスニュース 業界動向

市場調査会社によると、PC市場は低迷しているが、ワークステーション市場は堅調な伸びをみせているという。専門的な用途で使うワークステーションは、タブレット端末やスマートフォンを代わりに使うことは、性能や信頼性の面で難しいからだ。

» 2013年12月17日 10時39分 公開
[Zewde Yeraswork,EE Times]

 スマートフォンやタブレット端末が、高い人気を獲得して売上高が伸びている一方、PC市場は今後も縮小傾向となる見込みだ。ただし、米国の市場調査会社であるJon Peddie Research(JPR)によると、ワークステーションをはじめとする専門用途向けの市場に関しては、引き続き堅調な成長が見込まれているという。

 JPRは最近、2013年第3四半期に関するデータの収集/分析を完了したところだ。それによると、同四半期におけるワークステーションの世界出荷台数は、97万3100台に達したという。同四半期は通常、季節的な要因によって減速する傾向にあるが、ワークステーション市場は2四半期連続で成長し、成長率3.6%で伸びる結果となった。ワークステーションの世界出荷台数は、2011年には減速傾向にあったものの、2013年第3四半期には約100万台という記録的な成長を達成した。JPRによると、ワークステーションなどの専門用途向けPC市場は、長期的に力強く成長していく見込みだという。

 JPRの分析が正しければ、2013年第4四半期におけるワークステーションの出荷台数は、さらに記録を更新するとみられる。ワークステーション市場は、2四半期連続で力強い成長を達成することになり、PC市場よりも堅調なのは明らかだ。

 JPRは、EE Timesのインタビューに応じ、「ワークステーション市場は、PC市場やタブレット端末市場と比べて規模は劣るものの、販売価格や平均販売価格(ASP:Average Selling Price)がPCよりも3〜5倍高い。ワークステーション市場の顧客基盤は、分子モデリングや医薬品などのさまざまなハイエンド分野によって形成されている。こうしたハイエンド業界は、ワークステーションに対する多額の投資をいとわない。製品の高い信頼性を最も重要視しているためだ」と述べている。

ワークステーション市場は、規模は小さいものの、堅調な成長を遂げている

 JPRは、エンドユーザーの視点から見たワークステーションとPCの違いや、それぞれのユーザーエクスペリエンスについて説明している。「例えば、個人が購入する一般的なPCは、性能が過剰だといえる。ワークステーションに搭載されている半導体チップは、一般的なPCで使われているものと同じだが、試験回数が通常のPCより多く、潜在的な処理性能と比べて動作が若干遅くなっている。チップの動作が速いと、発熱量が多くなり、故障頻度も高くなるためだ」と指摘する。

 同社は、「PCやタブレット端末、スマートフォンと比べて、ワークステーションはより堅ろうであることが求められる。十分なテストや配慮を施して丈夫に作られているため、故障によって停止することがない」と付け加えた。JPRでサーバとして使用しているHP(Hewlett-Packard)製のワークステーションは、非常に信頼性が高く、5〜6年間止まることなく稼働しているという。

 JPRによると、ワークステーションの主な用途はCADだという。CADは建築や自動車といった分野の他、テレビ/映画業界でもアニメーション製作の3Dモデリングに使われている。

HPのシェアが40%超

 メーカー別に見ると、首位のHPと第2位のDell、第4位の富士通の販売台数は、2013年第2四半期から横ばいとなった。HPは、2013年第3四半期のワークステーション市場で41.9%のシェアを獲得し、首位を維持した。Dellは32%、富士通は3.7%だった。一方、第3位のLenovoはシェアを伸ばし、13.7%を獲得した。

 JPRはこの他、GPUコンピューティングと並列処理の可能性についても言及した。同氏は、「専門用途向けのグラフィックス技術の需要は着実に伸びており、GPUコンピューティング市場は前年比19.7%で成長している」と述べている。

 GPUコンピューティングを活用したソフトウェアも続々と市場に投入されている。

 Khronos Groupは2013年11月に、ヘテロジニアスコンピューティングを利用した並列コンピューティングのための規格「OpenCL 2.0」を公開した。同社はその直後、コンピュータビジョンの規格である「OpenVX」も発表している。

 タブレット端末やスマートフォンなどの製品が登場したことで、ノートPC市場は低迷が続いている。だが、信頼性が高く、並列処理が可能な、専門用途向けのワークステーションに代わる製品はない。JPRのシニアアナリストで、「JPRワークステーションリポート」の著者であるAlex Herrera氏は、「消費者は一斉にタブレット端末とスマートフォンにシフトしている。PCはめったに買い替えないか、まったく使わないかのどちらかだ。ただし、専門的な用途については、こうした傾向はみられない。専門分野では、タブレット端末やスマートフォンはワークステーションの代わりにはならないからだ」と述べている。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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