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» 2014年02月07日 07時00分 公開

“AI”はどこへ行った?(最終回):AIはどこへ行く? 〜人間との共存共栄は可能なのか〜 (3/3)

[世古雅人,カレンコンサルティング]
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ロボットと人間社会との共存共栄

 ロボットと人間社会の共存共栄については、10年以上前から経済産業省をはじめ、国、民間企業、大学などの研究機関においても、さまざまな調査や報告が行われている。

 共存共栄に関して言えば、主に人型ロボットよりも、福祉・介護・犯罪抑止・災害復旧支援・軍事分野で活用されているロボットだろう。これらは、AIを搭載しているものもあるが、非搭載のものも少なくない。非搭載のものは、自らの情報収集や判断によって動くのではなく、人間が遠隔操作する場合がほとんどだ。介護や災害復旧の現場で、人間の力では持ち上げられないものを持ち上げる。原子力発電所など、人間にとっては危険な環境下で作業を行うなどである。その他、工場や倉庫、病院などでもロボットが活躍しているが、いずれも「人間を助けるためのロボット」とひとくくりにできそうだ。

 一方で、外見だけは人間そっくりなロボットも登場しているものの、筆者が“ハード型AI”と呼んでいる「単独で考え・意志と感情を持つ・人工的に作られた知能」の登場は、もっと時間がかかるだろう。10年後になるかもしれないし、100年後になるかもしれない。

 ただ、少なくとも「人間社会との共存共栄」をうたうのであれば、外見やしぐさはともかく、AIで動くロボットが人間に脅威を与えてはならない。のび太君と人間的な会話ができ、人間社会に溶け込んでいるドラえもんを、脅威だと感じる人はいないだろう。ハード型AIが実用化した場合は、(四次元ポケットはなくても)ドラえもんのように、人間に脅威を与えないことが必要になる。もっとも、「AIが暴走し、人間と戦いを始めるかもしれない……」などと考えてしまうのは、SF映画や小説に影響を受けた、筆者世代だけなのかもしれない。

研究領域のボーダーレス化

 第3回:「スカイネット」が現実に? AIの未来像は“自我”がキーワードで述べたように、AIの未来像は“自我”がキーワードだ。ハード型AIである「単独で考え・意志と感情を持つ・人工的に作られた知能」が、「自我を持ち」、人間と同じように振る舞うためには、いくつもの課題をクリアしなくてはならない。

ハード型のAIは人工的に作られた知能ではなく、脳なのだ。そう考えると、工学分野はもちろん、脳外科・脳科学などの医学分野、生体分野など、脳の記憶/学習などのメカニズムが解明されなければならない。さらに、人工知能として活用されるためには、研究領域の垣根をなくしていくこと(ボーダーレス化)が重要である。

夢はやっぱり「鉄腕アトム」

 筆者が生きている間に登場してほしいAIは、(AIを搭載した)鉄腕アトムである。

 ビッグデータの解析が苦手でも構わない。それはコンピュータに任せておけばいいだけのこと。人間とよき友達関係を結べて、うれしいときは喜び、悲しいときには泣く(涙を流せるかどうかは別)といったように、感情/自我を持っている。課題の解決に力を貸してくれて、人間を襲うことなどあり得ない。人間との共存共栄がきちんと成り立つ――。そんなロボットが登場してほしい。

 ずばぬけた頭脳を持ち、重い物でも軽々と持ち上げるなど人間の何倍もの力を有し、善悪を見極め、人類にとって正しい道を進むロボット。その実現のためには、AIの研究と実用化だけではなく、メカトロニクスやセンサー類の技術革新など、ロボット工学全体のイノベーションも必要だ。

 人間は己の損得のために、人を傷つけ、時には戦争を起こすことも平気でやらかす。人間と同等以上の知能を持ち、かつ、はるかに崇高な思想や信念を持つことをAIに望んでしまうのは、世の中の人間に対する一種の否定の表れかもしれない。明るい未来を描くために、人間の役に立ち、人間の手本ともなるようなロボットがあってもいいなと思う今日この頃である。


Profile

世古雅人(せこ まさひと)

工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者として、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。

2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱している。2010年11月に技術評論社より『上流モデリングによる業務改善手法入門』を出版。2012年4月から2013年5月までEE Times Japanにて『いまどきエンジニアの育て方』のコラムを連載。


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