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LEDの正面輝度を20%向上、サファイア基板に微小な複合構造体を形成LED Next Stage 2014

王子ホールディングスは、基板の表面に微小な凹凸構造を設けることでLEDチップ内部の光を外部に効率よく取り出すことができるサファイア基板(PSS:Patterned Sapphire Substrate)の製造技術を確立した。従来のPSSを用いたLEDチップに比べて、今回の技術を使ったLEDチップは、発光波長385nmで正面輝度を約20%向上できるという。

» 2014年03月07日 12時54分 公開
[馬本隆綱,EE Times Japan]

 王子ホールディングスは、基板の表面に微小な凹凸構造を設けることでLEDチップ内部の光を外部に効率よく取り出すことができるサファイア基板(PSS:Patterned Sapphire Substrate)の製造技術を確立し、「LED Next Stage 2014」(2014年3月4〜7日、東京ビッグサイト)で展示した。従来のPSSを用いたLEDチップに比べて、今回の技術を用いて試作したLEDチップは、発光波長385nmで正面輝度を約20%向上できるという。同社が開発した技術を用いると、最小200nmピッチの微細構造体を製造することができる。その上、円すい型やドーム型など複合構造体を製作することも可能だ。2014年4月よりサンプル品の提供を始め、2016年度中の製品化を目指している。

最小200nmピッチの凹凸構造を実現

 PSSは、LEDチップ内部の光を効率よく外部に取り出すことができるため、以前からLEDチップの製造に用いられてきた。しかし、これまでの加工方法だと凹凸構造のピッチは3μm程度が限界であった。これに対して同社は、製紙会社として培ってきた微細粒子の精密塗工技術を応用して、微小な凹凸構造の加工を行った。これまで他社が行ってきた方法とは異なる製造技術で、最小200nmピッチの凹凸構造を形成できたという。しかも、「凹凸のピッチや形状を自由に制御することが可能なため、円すい型や釣り鐘型、ドーム型など、LEDチップの発光波長や素子構成に合わせて、最適な複合微細構造体を形成することができる」(説明員)と話す。

作製した微細構造体の一例(表面と断面のSEM像)

 同社のPSSを用いたLEDチップは、表面に凹凸構造がない平坦なサファイア基板を用いたLEDチップに比べて、凹凸構造のピッチが3μm程度で発光波長385nmの場合に、正面輝度は2.4倍も高くなることが確認されている。全光束*)も1.8倍の出力が得られたという。

*)全光束:光源から全ての方向に発せられる光束

表面に凹凸構造がない平坦なサファイア基板を用いたLEDチップ(左)と新規開発のPSSを用いたLEDチップ(右)を並べて点灯させると、輝度の違いが分かる

 同様に、他社製PSSと新開発のPSSを用いて、凹凸構造のピッチが3μm程度で発光波長が385nmのLEDチップをそれぞれ試作し正面輝度を比較したところ、新開発のPSSを用いたLEDチップが約20%高いことが分かったという。凹凸構造のピッチが400nmや200nmのPSS、あるいは複合構造体を形成したPSSについてもLEDチップを試作し、その特性を評価していく予定だ。

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