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ドイツとイングランドの戦いは既にキックオフ? 最先端のゴール判定技術で【前編】ワールドカップで本格的に導入(2/2 ページ)

» 2014年05月22日 14時05分 公開
[John Walko,EE Times]
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GoalControl-4D対ホークアイ

 事実、両社のゴール判定システムの機能はよく似ている。だが、開発方法についてはいずれもほとんど明らかにしていない。ただ、両社のシステムの出発点が研究プロジェクトであることは共通している。Hawk-Eye Innovationsのシステムは、英国の研究所Roke Manor Researchに所属する人工知能のスペシャリスト、Paul Hawkins博士によって開発され、その後Siemensが所有するようになったが、当初は無線通信や軍事通信を手掛けるPlesseyで立ち上げられた研究だった。

 開発したシステムに「Hawk-eye(ホークアイ)」と自らの名前を冠したHawkins博士は、システムの実用化を目指すべく、スピンオフ企業としてHawk-Eye Innovationsを立ち上げた。その後2011年にソニーが同社を買収し、現在はソニーのグループ会社となっている。

 ホークアイのコア技術は、テニスやクリケットの国際試合での使用に向けて1990年代後半に開発された。Hawk-Eye Innovationsは現在、メジャーリーグや、カーレースのNASCAR(全米自動車競争協会)などがある米国を主要な潜在市場と見なしている。

 GoalControl-4Dのルーツは、ドイツ アーヘン大学のプラスチック加工研究のスピンオフにまでさかのぼる。GoalControlについて知られていることは少ない。アーヘン近郊のウュルゼレンに拠点を置いており、Pixargusと密接に連携しているという。Pixargusは、カメラやソフトウェアを用いた、自動車や医療機器向け精密部品の製造ラインの品質管理システムの開発と販売を手掛けている。

 Broichhausen氏によると、GoalControl-4Dはわずか4年前に開発され、その直後にFIFAが採用を決定した。短期間で採用された理由は、GoalControlの優れた画像処理技術と分析技術が、Pixargusのマシンビジョンシステムに既に搭載されていたからである。さらに、ゴール判定技術の導入に必要な技術を全てGoalControlが手掛けていたことも要因だった。Broichhausen氏はEE Timesに対し、「GoalControl-4Dシステムの際立った特長として、高精度、リアルタイム処理、フレームレートの高さの他、絶対的な信頼性と再現性が挙げられる」と語った。

ブラジル大会では、ゴール判定技術が初めて本格的に導入される

 ただし、こうした特長はホークアイも備えている。どちらのシステムも受動的な技術であり、導入するために専用のボールやゴールポストを使用したり、グラウンドに何らかのシステムを組み込む必要はない。

 GoalControl-4Dもホークアイも、1カ所のゴールエリアを7台のハイスピードカメラ(500フレーム/秒)で監視する。ボールの速度や、ボールが完全にゴールラインを越えたかどうかを、ほんの一瞬(規定では1秒以内)で判定できる。映像は、光ファイバを介して複数のPCに転送される。

 Hawk-Eye InnovationsのUpshon氏は「当社の技術は、英国のプレミアリーグで採用された年からずっと成功を収めている」と述べた。

【後編はこちら】

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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