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「ルネサスとは目指す方向性が違った」――ルネサスエスピードライバ社長シナプティクスが買収会見

シナプティクスは2014年6月11日、ルネサスエスピードライバ(RSP)買収に伴う会見を都内で開催し、買収に至った経緯や買収の狙いなどを説明した。またRSP社長の工藤郁夫氏も会見に同席し、「ルネサスとは目指す方向性が違った」とシナプティクスに売却が決まった理由などを語った。

» 2014年06月11日 18時25分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 シナプティクスは2014年6月11日、同年6月10日(米国時間)にルネサス エレクトロニクスなどと最終合意したルネサスエスピードライバ(以下、RSP)の買収に関する会見を都内で開催した。会見に同席したRSP社長の工藤郁夫氏は、「(シナプティクスによる)買収を発表できて良かった。(親会社である)ルネサスとは目指す方向性が違っていた」と語った。

タッチコントローラICとドライバICを統合

 シナプティクスは、中小型液晶ドライバICメーカーのRSPを2014年中に約485億円で買収することで、RSPに出資するルネサス、シャープ、パワーチップと最終合意した(関連記事:ルネサスSPドライバを485億円でシナプティクスが買収)。RSPを買収する狙いについて、シナプティクスの社長兼CEO(最高経営責任者)であるRick Bergman氏は、「タッチパッドコントローラのシナプティクスと、液晶表示ドライバICのRSPという2つのリーダーが手を組むことで、プラットフォームレベルでの製品をスマートフォン、タブレットPC、ノートPCに提供できるようになる。ディスプレイに(タッチコントローラとドライバICを)統合した製品提供が行えるようになる上、製品ポートフォリオが広がることで顧客とより戦略的な関係を築くことができ、ヒューマンインタフェース分野でのトップのシナプティクスの地位を確固たるものにできる」とした。

左=ルネサスエスピードライバ買収の狙い。中央=シナプティクス、ルネサスエスピードライバ両社の概要。右=買収の概要 (クリックで拡大) 出典:シナプティクス

AppleなどRSPの販路に期待

シナプティクスの社長兼CEO(最高経営責任者)であるRick Bergman氏

 スマートフォンやタブレット端末など向けの中小型液晶ディスプレイ用表示ドライバICを手掛けてきたRSPは特に高精細ディスプレイ向けに強く、最終的な製品ユーザーにはアップルなどの大手スマートフォンメーカーが名を連ねる。一方で、シナプティクスは、ノートPC用のタッチパッド用コントローラ分野に強く、スマートフォン向けで需要が大きく拡大しているタッチパネル用コントローラ分野は比較的弱い。そのため、Bergman氏は、「現状のシナプティクスはアップルとは、取引きがない。一方でRSPは、アップルと強いコネクションがある。アップルにシナプティクスの商品が再び採用されるようにRSPの強いアップルとの関係を生かせればうれしい」と期待を込めた。

左=シナプティクスの事業の歴史。中央=シナプティクスの最近の業績。右=シナプティクスがルネサスエスピードライバ買収で期待する事業対象市場規模 (クリックで拡大) 出典:シナプティクス

「最もシナジーが見込める会社」

ルネサスエスピードライバ 社長の工藤郁夫氏

 高精細ディスプレイを搭載したスマートフォン需要の急拡大を背景に、好調な業績が続いてきたRSPだが、経営再建を目指す親会社のルネサス エレクトロニクスの注力分野から液晶ドライバIC事業は外れた格好となり、2013年ごろから売却先を模索してきた模様。一時は、主要顧客で安定した部品調達を望むアップルが売却先に浮上するなど、複数の売却先候補があったとみられる。売却先がシナプティクスに決まったことに関してRSP社長の工藤氏は、「売却先の選定は(ルネサスなど)出資元が決定したこと」と前置きしながら、「最もシナジーが見込める会社としてシナプティクスへの売却が決まった。技術、顧客の双方で、大きなシナジーを期待している」とした。

買収に伴う“リストラなし”を明言

 シナプティクスは2014年内にRSPの買収作業を完了する方針。約350人(うち50人は台湾拠点所属)のRSP従業員については、「成功している企業であり、全従業員に勤務継続のオファーを出す。全従業員に残ってもらいたい」と明言した。

 その後、シナプティクスでは、自社のタッチコントローラICと、RSPの液晶表示ドライバICを1チップに統合した製品開発などを行っていく方針。「今後、開発スケジュールなどは協議、検討していく」としつつ、「一般に、タッチコントローラとドライバ統合型の製品がスマートフォンに搭載される時期は、2016年ごろだろう」と語り、2015〜2016年には統合型の1チップ製品を市場投入していくとみられる。

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