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計測器は古臭い! 新世代“ジェネレーションY”の計測器をNIが新たな製品コンセプトを提唱

ナショナルインスツルメンツは、計測機器の新たな製品開発コンセプトによる製品開発に着手した。新たな製品開発コンセプトとは、「若手世代のエンジニアでも受け入れられる計測器」だ。若手エンジニアが慣れ親しむデジタル機器の技術要素を積極的に計測器へと展開していく。

» 2014年06月16日 13時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 電子計測器といえば、計測結果を表示するディスプレイとその横に操作用ボタンやボリュームが並んでいるボックスを思い浮かべる人が多いだろう。ディスプレイとボタンという組み合わせの計測器のユーザーインタフェース(UI)は、ごく普通、当たり前のものだ。

 けれどこの計測器のUIに、“違和感”、“不自然さ”を感じる人たちが年々、増えてきているのだ。それは、「ジェネレーションY」と呼ばれる若い世代のエンジニアたちだ。

 ジェネレーションYとは、定義はまちまちだが、1975〜1980年ぐらいから1990年代半ばぐらいまでの間に生まれた世代を指す米国の言葉だ。日本では、「ゆとり世代」などと呼ばれる世代とほぼ年代が合致し、主に現在の20代〜30代前半を指す。

 このジェネレーションYの特長としては、10代のころからPCをはじめ携帯電話機を使い、インターネットを利用していた世代であり、物心が付いたときからデジタル機器、インターネット接続が当たり前の「デジタルネイティブ」の割合が非常に多い世代だ。そのため、新しいデジタルデバイス/ガジェットもいち早く取り入れ、スマートフォンも当たり前の様に利用する。特に計測器を使うジェネレーションYのエンジニアには、「デジタルネイティブ」の傾向がより顕著だろう。

デジタルネイティブのエンジニアたち

 そうしたデジタルネイティブのジェネレーションY世代のエンジニアからみれば、現状の計測器には多くの違和感があるという。

 計測機器ベンダーであるナショナルインスツルメンツの日本法人(以下、日本NI)でプロダクトマーケティングエンジニアを務めるケーシー スワロー氏も、計測器に違和感を抱く1986年生まれのジェネレーションYエンジニアの1人だ。「いまだに、ファンクションキー、シフトキーを押しながら、ボタンを押して操作するということに慣れない。何より、ボタンで機器を操作すると、万が一間違えた場合、やり直せなくなるような気がして、ボタンを押すのをためらう」と漏らす。

 ジェネレーションYのエンジニアの多くが、慣れ親しむ機器はスマートフォンやタブレット端末、そしてPCであり、タッチパネルやマウスでの操作が当たり前。「操作に迷えば、右クリックや長押しなどの操作で、実行前にメニューを確認できる。ボタンではそういうことができない」とスワロー氏は、ボタン操作をためらう理由をそう説明する。

ジェネレーションYのケーシー・スワロー氏(左)と、1970年生まれのジェネレーションXである日本NI 社長の池田亮太氏

 「よくよく考えれば、計測器のボタンやノブで行うUIは、40〜50年前のアナログ式の計測器とほぼ変わっていない。電話機がダイヤル式、プッシュ式の固定電話から携帯電話機、そしてタッチパネル式のスマートフォンへと進化してきたのとは、対象的だ」と分析するのは、日本NI社長の池田亮太氏だ。

50年前と変わらないUI

 池田氏は、「計測器も、アナログ式からデジタル式に進化し、ハンディタイプの計測器も登場してきた。さらにNIとしては、PCベースで制御、データ取り込みができるPCと親和性の良い計測器を先行して投入するなど、常に時代に合致した計測器を投入してきた。だが、計測器の主流はまだまだディスプレイとボタンを組み合わせた旧来のものであり、若いエンジニアが慣れないのは無理もない。計測器もジェネレーションYの若い世代でも、使いやすくなるよう、最新の技術を取り込むべき時期を迎えている」と指摘する。

各世代、時代の計測器のイメージ 出典:日本ナショナルインスツルメンツ

新世代と計測器の“ギャップ”を埋める

 そこでNIでは、ジェネレーションYと現状の計測器の間に存在するギャップを分析。「タッチスクリーン」「モバイルベース」「クラウド接続」「インテリジェンス」の4つが、ジェネレーションYが求めるテクノロジーでありながら現状の計測器に欠けているテクノロジー要素であると割り出した。

 具体的には、NIが推し進めてきたPC連動の計測器を、タッチスクリーンを持つスマートフォン/タブレット端末といったモバイル機器と連動する計測器にして、もう一歩進化させる。さらに、そうしたモバイル機器のインターネット/通信への常時接続性を利用したクラウドサービスへの接続や、さらにはクラウド上などのリッチな処理環境でのインテリジェンスなデータ加工などを実現させるというものだ。

 「スマートフォンで取った写真は、その場で自動的にクラウド上にアップされ、家族や仲間と共有できるのが当たり前。計測データも、スマートフォンなどを通じて、データ共有できれば、相当、“楽”になるはず」とスワロー氏も、ジェネレーションYが求める4つのテクノロジーを組み込んだ計測器の登場に期待を寄せる。

求めるのは“楽”ではなく、“よりよいモノ”

 ただ、少し見方を変えれば、現状の計測器でも、USBメモリを使えばデータは共有でき、タッチスクリーンでなくても、さまざまな操作は行える。ジェネレーションYが求めるテクノロジーは、ちょっとした手間を省くことができる技術といえなくもない。特に、現状の計測器を使いこなすエンジニアには、不要な技術かもしれない。

 「ジェネレーションYを意識した技術ではあるが、(ジェネレーションYの前世代である)ジェネレーションX以前の世代にも、必ず受け入れられる技術だ。計測器は、より良いモノづくりのためのツールであり、そのツールを使いこなすために時間を掛けることは、無駄だ。計測器を使う時間を短縮して、その分、モノづくりに時間を費やせる。どの世代のエンジニアも、目指す方向性は“よりよいモノを作る”という点は変わらない訳であり、ジェネレーションYに向けたテクノロジーを備えた計測器は、全エンジニアの問題解決につながる」と池田氏は言い切る。

間もなく、新コンセプト製品発表へ

 既にNIでは、こうしたジェネレーションYが求めるテクノロジー取り入れた新コンセプトの製品開発をスタートさせているという。池田氏は「間もなく、こうしたコンセプトを取り入れ、ジェネレーションYにも受け入れやすい製品を紹介できるだろう。NIとして新しい時代の計測器を提案していきたい」としている。

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