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NASAの炭素観測衛星「OCO-2」、植物の蛍光で二酸化炭素の量をマッピング日本も技術協力(2/3 ページ)

» 2014年06月30日 16時30分 公開
[George LeopoldEE Times]

 また、前回の打ち上げが失敗したことによって、OCOの科学者たちは、2009年に打ち上げられた日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT:Greenhouse Gases Observing Satellite)」のマネジャーたちと協業するチャンスを得ることができた。いぶきは、大気中の二酸化炭素とメタンガスの濃度を測定する。JPLの研究科学者であるChristian Frankenberg氏は、NASAのミッションマネジャーが新しいペイロードの準備を整えたときに、日本が収集したデータに隠れていた、ある点に気が付いた。それは、太陽光に誘起されたクロロフィル蛍光の存在である。クロロフィル蛍光は、実験室では比較的簡単に測定することができるが、宇宙空間では、海上上空でなければ観測することができない。

 クロロフィル蛍光は、植物が光合成において太陽光を化学エネルギーに変換する際に放出される。植物が太陽光を吸収すると、その太陽光の一部は熱となって消えるが、その他の放射エネルギーは、波長がやや長いクロロフィル蛍光として再放出される。

 地上では太陽光が明るすぎるため、このようなクロロフィル蛍光を観測することは難しい。そこでFrankenberg氏は直感的に、電磁スペクトルの中に存在する暗線「フラウンホーファー線」の技術を適用した。

 ドイツの光学技術者であるJoseph Fraunhofer氏は、このアイデアを利用して、多くの分光器で使われている回折格子の開発に取り組んだ。

 日本の衛星は、フーリエ変換分光器を使用している。Frankenberg氏は、フラウンホーファー線を用いて、OCO-2用の回折格子分光器を開発するための手法を考え出した。これによって、衛星から地上の太陽光誘起蛍光を計測することが初めて可能になるという。

2014年7月1日に打ち上げられる「OCO-2」(クリックで拡大) 出典:NASA

 Basilio氏は、「蛍光に関するデータと、大気中二酸化炭素に関するデータを組み合わせることにより、OCO-2のミッションによる成果の重要性が一層高まることになる」と指摘する。期待通りの成果を実現できれば、NASAが約10kmの範囲毎に観測する地上データと合わせることで、二酸化炭素の発生源や吸収源に関する極めて重要な地域別データを得ることができる。

 その根拠の1つとして挙げられるのが、単に大気中の二酸化炭素濃度を測定するだけでは、地上で生じている現象が直接反映されないという点だ。このため、今回のミッションで新型の分光器を使うことにより、Basilio氏が「地球物理学的記録」と呼ぶ、地球の炭素循環における現象を示すデータを、気候科学者に提供できるようになるとみている。

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