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TSMCが設備投資額を100億ドルに拡大、16nm FinFET量産準備でApple「iPad」向け「A8X」を受注したから!?(2/2 ページ)

» 2014年10月21日 16時50分 公開
[Alan PattersonEE Times]
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Samsungに後れを取っているが……

 野村証券のHsu氏は、「TSMCが2015年に、FinFET市場におけるシェアでSamsungに10%の後れを取ったとしても、それほど大きな問題ではない。TSMCは、Chang氏の当初の予測よりも早くシェアを取り戻すことができるだろう」と述べている。

 Wei氏は2014年7月、「TSMCは2015年以降、数年間にわたり、FinFET分野におけるリードを拡大していく」と繰り返し主張していた。また同氏は、「当社は既に、16nmプロセス開発エコシステムの体制を整えている。現在のところ、業界最大のエコシステムであると確信している」と述べている。

 TSMCによると、同社は16nmプロセス適用チップの試験において、最大2.3GHzの動作周波数を実現し、消費電力量を約75mWに低減することに成功したという。

 同社は現在、利益率が高い28nmプロセス技術からの移行を進めている。28nmプロセスは、約2年にわたりファウンドリ業界で主流だったが、将来的にはスマートフォン向けの年平均成長率(CAGR)が低迷し、利益を生み出せなくなる可能性があると考えられている。

 同社は、28nmプロセス技術を調整して低消費電力を実現することにより、車載市場などのさまざまな新しい市場に向けたIoT(モノのインターネット)端末に適用していきたい考えだ。

 TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、「16nmプロセス適用による量産が軌道に乗るのは、2017年以降になるだろう」と述べる。

 またWei氏は、「16nm FinFETプロセス適用チップがTSMCの売上高全体に占める割合は、2015年第4四半期までに1桁台後半になるとみている」と述べる。

 TSMCは20nmプロセス適用チップについて、16nm適用チップと同世代のプロセス技術の一部とみなしているという。同社は、この20nmプロセス適用チップの生産量を拡大することによって、目標とする歩留まりを達成した。TSMCの売上高全体において20nmプロセスを適用したチップが占める割合は、2014年第4四半期には20%となる見込みだが、2015年にはわずかながら増加し、20%を超えるとみられている。

中国低迷への懸念を払拭

 Microchip TechnologyのCEOであるSteve Sanghi氏は2014年10月初め、「Microchipの2015会計年度第2四半期(2014年7〜9月期)における売上高は、以前の予測を下回る見込みだ。その要因としては、中国経済の低迷や、流通経路における在庫の増加などが挙げられる」と述べ、業界に警鐘を鳴らした(関連記事:半導体業界は本当に低迷している? ――アナリストの見解とは)。しかしTSMCは、このような懸念を一掃している。

 Liu氏は、「中国国内の需要は、これまでと変わらない。中国市場における4G対応スマートフォンの需要も引き続き堅調であることから、TSMCは2014年第4四半期に過去最高の売上高を達成できるとみている」と述べている。

 またTSMCは、「2014年中に行う予定の在庫調整については、同年7月の時点での予測よりも少なくて済む見込みだ」という。

 TSMCは、ライバル企業であるUMC(United Microelectronics Corporation)が2014年10月に、中国に300mmファブを建設すると発表したことについて問われ、「当社が中国国内に2つ目となるファブを建設する可能性については、否定しない」と答えている。

 Liu氏によると、「中国政府が、新工場の建設に対して補助金を提供していることから、TSMCにとってはこれが脅威となっている。しかし当社は、今後も最先端技術や顧客サービスを提供し続けることにより、中国での市場機会を拡大していくことができる」と述べている。

10nmプロセスは、2016年の実用化を目指す

 TSMCは、10nmプロセスの実現に向けたロードマップについても少し触れている。Liu氏によると、同社は現在、10社の顧客企業と共同で、10nmプロセスを適用した製品の開発に取り組んでいるところだという。

 「2016年の生産開始を目指す。ARMコアを使用した認証は完了している。われわれの10nmプロセスチップは、処理速度、消費電力、ゲート密度において業界の最先端をいくものとなるだろう」(同氏)。

 TSMCは、最初の10nmプロセス品にはEUV(極端紫外線)リソグラフィは使用しない予定だ。同社はプロセス技術に関連する装置をASMLと開発している。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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