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» 2015年01月21日 08時30分 公開

地球温暖化の根拠に迫る世界を「数字」で回してみよう(11) 環境問題(3/5 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

「地球放送局」

後輩:「さて、ここまでが、地球が太陽から受け取るエネルギーの話でした。ここからは、地球が、自分の大気の中にため込むエネルギーの話をします」
江端:「ようやく地球温暖化の話か……」
後輩:「実は、地球も太陽と同じように、エネルギーを放射する黒体、つまり、熱源と考えるんですよ」
江端:「『熱源』たって、どこからそんなエネルギーが……、あ、火山とかマグマの話をしている?」
後輩:「いや、そんな、チンケなエネルギーではないです」
江端:「『チンケ』って、火山の爆発力ってすごいじゃないか」
後輩:「『火山が爆発したために、ふもとの町の気温が10℃上昇した』なんて話、聞きませんよね。でも、私たちは、最低気温0℃、最高気温10℃という日常を過ごしていますよね」
江端:「うっ! ……確かに」

後輩:「熱源は、さきほど説明した“太陽からもらった72%のエネルギー”です」
江端:「ふーん。太陽からもらったエネルギーを使って、今度は地球が『地球放送局』になるわけだな。この『地球放送局』も地球を青く見せるの?」
後輩:「残念ながら、地球の熱源(平均気温17℃[290K])程度では、可視光線を作ることができません。赤外線がせいぜいです」
江端:「『黒体』の考え方からすれば、熱を持っている物体は、例外なく赤外線を出していることになるわけだよね」
後輩:「そうです」
江端:「この柱もこの床も、そして私たちの体も、何もかも赤外線を出している、ってことだよね。なんか信じられないなぁ」
後輩:「そうですか? 江端さんがご自宅のPCから頻繁に見ている『カップルが、深夜の公園のベンチで、あんなことやこんなことをしている赤外線写真』を思い出してください。あの写真では、カップルのカラダだけからでなく、地面やベンチも白く輝いて写っていたでしょう? あれが、赤外線が放射されている証拠です」
江端:「人聞きの悪いこと言うな!」

photo 熱を持っている物体は、例外なく赤外線を出している

後輩:「じゃあ、今度は『地球放送局』のイメージを書いてみますね」

photo

江端:「なるほど、全部、赤外線の放送局になっているわけだ」
後輩:「この“赤外線放送局”の電波が、全部宇宙空間に出ていってくれれば、地球温暖化は全く発生しないんです。もっとも、本当に全部出ていってしまったら、地球は“マイナス16.3℃”になってしまうんですけどね」
江端:「要するに、“赤外線放送局”の電波を、宇宙に放出する前に、大気中で取っ捕まえてしまうから、地球温暖化が起こるわけだ」
後輩:「そういうことです」
江端:「で、誰が(どの気体が)、どのくらい(どの吸収率)、取っ捕まえているの?」
後輩:「人工衛星で測定した、地球から放射される赤外線は、こんな感じですかねえ」

photo

江端:「……なんかさぁ、ほとんど全部の赤外線が地球の外に出ていけないみたいだが。それに、CO2より、雲(水蒸気)の方が影響が大きいじゃないか」
後輩:「CO2と違って、地球上の水はトータルとしては増えませんし、雲は冷えて、いずれは雨になりますよね」
江端:「そうか、人間が作り出したCO2がドライアイスになって地表に落ちてくることはないもんな(ドライアイスの昇華温度はマイナス79℃)。つまり、大気中のCO2は増える一方なんだから、CO2のことだけ考えていれば良いということだな」
後輩:「そんな簡単な話じゃありません」
江端:「ん?」

後輩:「例えば、地球が温暖化すれば水蒸気の量が増えます。水蒸気の量が増えれば地球温暖化も進みます。これがグルグル回り続けるようなことになれば……」
江端:「どうなる?」
後輩:「『暴走温室効果』(「大気化学入門」P.124−)で、いずれは、地球から水分がなくなって、地表温度400℃の金星のようになります」
江端:「……本当か?」
後輩:「ウソです」
江端:「お〜ま〜え〜な〜〜」
後輩:「地球での温室効果は、現在より17.7℃アップが上限です(後述)。この程度の温度なら、地上の水が全てなくなる心配はしなくてよいでしょう。ただ、『大気中の雲(水蒸気)の存在を無視してよい』というのは正しくはありません。『地球温暖化が、地球温暖化を加速する』という可能性はあるのです」

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