早稲田大学は2015年2月18日、配線上にクラック(亀裂)が生じても電圧印加によりそのクラックを自己修復する金属配線を実現したと発表した。発表したのは、同大学理工学術院の岩瀬英治准教授と、大学院基幹理工学研究科修士1年の古志知也氏。フレキシブルな機器に用いる伸縮配線や、環境の温度変化で疲労を受ける電子基板上の金属配線などに応用できるとしている。
同研究では、金属配線として厚さ100nmの金配線、金属ナノ粒子(粒径が数nm〜数百nmの金属の微小粒子)が分散した液体として半径20nmの金ナノ粒子分散水溶液を用いた。
早稲田大学は、自己修復機能の確認について、次のように説明している。
まず、ガラス基板上に幅が一定のクラック(亀裂)をもつ金配線を作成した。金属配線と、それを覆うように金属ナノ粒子を含む液体が配置されている。クラックのある金属配線に電圧をかけると、クラック部にのみ電界が生じる。この電界により、金属ナノ粒子がクラック部に引き寄せられる力(誘電泳動力)が生じる。
通常の状態では、金属ナノ粒子は、ファンデルワールス力(分子間に働く引力)や静電反発力を受けて液中に分散しているが、電圧の印加によって誘電泳動力が大きくなると、「電界トラップ現象」が生じる。電極の間に生じる電界によって、電極の周りの粒子が電極間に引き寄せられる現象のことだ。これによって、クラック部にのみ金属ナノ粒子が集まる。集まった粒子によってクラック部が架橋され、金属配線が修復される仕組みだ。
さらに、一度クラックが修復されると、金属配線がつながって電界が生じなくなるので、それ以上の修復は行われない。上述した通り、通常、金属ナノ粒子は液中に分散しているのでクラック部以外の金属配線部にナノ粒子が吸着することはないという。
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