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「量子もつれ交換」を1000倍以上高速化――量子暗号の長距離化に向けて前進有線通信技術(1/2 ページ)

情報通信研究機構は2015年3月、電気通信大学と共同で、量子情報通信ネットワークの基本操作である「量子もつれ交換」を従来の1000倍以上に高速化したと発表した。

» 2015年03月23日 10時45分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 情報通信研究機構(以下、NICT)は2015年3月20日、電気通信大学と共同で、量子情報通信ネットワークの基本操作である「量子もつれ交換」を従来技術の1000倍以上に高速化したと発表した。従来の量子もつれ交換技術では、速度が遅く難しかった実際のネットワーク上での通信実験への適用が可能になるという。

 量子もつれ光子対は、離れた2地点にある光子の間に強い結び付き(量子もつれ相関)を持つため、レーザー光では実現できない安全な通信(量子暗号)や高速の計算(量子計算)を実現できる。複数の量子もつれ光子対をネットワーク上で伝送し、必要な地点間で量子もつれ相関を自在に形成することができれば、量子暗号の長距離化や量子計算機のネットワーク化が可能になる。

量子情報通信ネットワークの基本操作

 量子もつれ交換は、そうした量子情報通信ネットワークの基本操作(プロトコル)に当たる。量子もつれ交換とは、地点A、B間および地点B、C間でそれぞれ量子もつれ光子対A-BおよびB-Cを共有し、中間地点Bにおいて各対の光子2つにベル測定と呼ばれる操作を行うことで、本来、相関のなかった地点A、C間に量子もつれ相関を形成するものだ。

量子もつれ交換の原理 出典:NICT

 量子もつれ交換を通信ネットワーク上で実現するためには、光ファイバーに適した通信波長帯の光子対を用いる必要がある。通信波長帯における量子もつれ交換の処理速度は、「これまで最大でも10秒ごとに1回程度しか行うことができなかったため、プロトコル自体の原理実証はできても、実ネットワーク環境下の通信実験には至ってなかった」(NICT)とする。

 量子もつれ交換を高速化するためには、要素技術となる光子検出器の高速化と高感度化、さらに、A-B間、B-C間の量子もつれ光子対を生成する量子もつれ光源の高輝度化と高純度化が必要になる。

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