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数百万回伸び縮み、「発電ゴム」はセンサーにも向く新規材料(1/2 ページ)

リコーは2015年5月18日、圧力や振動を加えると高出力で電気を生み出す「発電ゴム」を開発したと発表した。100μm程度の薄膜であり、加工性に優れるため、センサーやIoT向けの環境発電用材料などの用途を見込むという。

» 2015年05月19日 16時00分 公開
[畑陽一郎EE Times Japan]

 「風に当てたり、手で軽く触れたりするだけでも反応し、接触センサーとしても利用できる『発電ゴム』を開発した。大きな圧力にも耐え、数百万回の繰り返し負荷試験*1)の結果、性能の劣化がないことも分かった」(リコー)。発電ゴムは同社が新規事業開発の一環として位置付ける材料だ。

 「5cm×10cmの発電ゴムシートをたたくと、数百V、数百μAの電力を生み出す。実験ではLEDが200個光った」(同社)。

 発電ゴムは押した(伸びた)瞬間と元に戻る(縮む)瞬間に逆向きの起電力を生み出す。このため、ゴム膜を押すと交流が発生し、次第に減衰する。LEDのような部品に電力を供給する際は途中に整流器(AC-DC変換器)を入れて動作させればよいという。

 リコーが開発した発電ゴムは、数十〜数百μmという薄いシートの両面に電極を配置した形状をとる(図1)。「研究室の設備の制約によって、現在は寸法が250mm×200mmに限られているものの、将来はロール状で供給することも可能になる。他社とのコラボレーションにより製品化につなげたい」(同社)。2016年には、まず展示会などで広く一般に実物を公開することを目指す。

*1) 発電ゴムシートに対して、50Nの負荷を円柱状の検査器具を用いて繰り返し加えた結果。

photo 図1 発電ゴムの外観 えび茶色の色味の部分が発電ゴム 出典:リコー

 リコーが目指す方向は大電力の発電ではない。2つの応用を考えているという。一つは微弱な圧力を感知するセンサーとしての用途。もう一つは環境からわずかな電力を集める環境発電。さまざまな装置が通信機能を備えるIoT(Internet of Things)の普及を考えると、電源コードを必要としない、自ら発電できる装置が望ましい。ここに発電ゴムが役立つ。

 発電ゴムの耐環境性は明らかになっていないものの、「水にぬらしたとしても乾燥させれば利用できる」(同社)。意匠性も良いようだ。「図1の例にあるように、用途に応じて着色が可能だ」(同社)。

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