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箱形計測器のように見えて、実はそうじゃない――2つの顔を持つワイヤレステスターWTP2015 / ワイヤレスジャパン2015(2/2 ページ)

» 2015年05月29日 17時55分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]
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ボックス型の利点を吸収

 とはいえ、NIは無線テスターとしてのモジュール式計測器の普及を諦めたわけではない。「WTSのハードウェアは、一見するとボックス型だが、中身はモジュール式であり、ほとんどの部分はPXIだ。ユーザー側で追加する必要のあったスイッチや扱いやすい大型コネクタを取り付け、すぐに製造ラインに組み込めるところまで組み上げた“ターンキー型モジュール式計測器”だ」。

 実際ボックスの後ろ半分は、PXIeシャーシ「PXIe-1078」であり、同シャーシ内にPXIコントローラモジュール、6GHzベクトル信号トランシーバが挿入されている。そして、ボックス前方は、モジュール式が抱えた課題を補うスイッチ機構や大型コネクタを実装したパネルであり、ベースはモジュール式ながら外見、使い勝手はボックス型という計測器を実現した。

これまでのテストエグゼクティブも使える

 WTSは、この外見はボックス型のハードウェアとともに、ソフトウェア(テストエグゼクティブ)で構成される。

「Wireless Test System」の構成と主な特長 (クリックで拡大) 出典:日本ナショナルインスツルメンツ

 無線テスター上で走らせるテストプログラムは、ユーザーごとに異なる上、規模が大きい。そうした理由から再利用性、流用性が求められる。そこで、ASCIIベースの測定器コマンド言語「SCPI」(Standard Commands for Programmable Instruments)ベースのテストエグゼクティブを用いることで、異なるメーカーのボックス型無線テスターでお小規模なプログラム改変で利用できるようになっている。そこで、WTSは、ボックス型からの置き換えを念頭に、SCPIインタフェースを備え、SCPIベースのテストエグゼクティブを使用できるようにし、ボックス型と同じ使い勝手を実現。さらに、追加(または新規)のテストプログラムを作成、実施するために独自のテストエグゼクティブ「TestStand」を用意。さまざまな無線テストプログラムをモジュール化した「ワイヤレステストモジュール」(WTM)がNIから提供され、GUI上のWTMをマウス操作で並べていくことにより、テストシーケンスを簡単に作成できる。専門知識が必要な無線チップセット向けコントローラも、主要チップセットベンダーの製品に対応したWTMが提供されるため、テスト用プログラムの開発負担軽減が期待できる。

5Gに向けて進化させられる

 6GHzベクトル信号トランシーバを備えるWTSは、2G(第2世代移動通信)から4Gまでの各種移動通信規格はもちろん、IEEE802.11n/同acを含むWi-Fi、Bluetooth、GPSなど「あらゆる無線規格のテストが1台で行える」(同社)という。仕様は、最大即時帯域幅200MHz、周波数範囲65MHz〜6GHzとなっているが、「今後、5G(第5世代移動通信)での利用が見込まれる6GHz以上の高周波帯に対応したベクトル信号トランシーバが登場すれば、モジュールを差し替えることで対応できる。新たな無線規格が登場しても、買い替える必要がないというモジュール式の利点は、そのまま」(同社)とする。

WTP2015では、既に導入しているPeikerが実際に使用するテスト治具(左)とともに、WTSを展示。世界6社のパートナー企業がテスト治具を含めたWTSのサポートを提供する (クリックで拡大)

 WTSの発売時期は、2015年8月を予定しているが、一部顧客向けには既に出荷を開始。日本NIでは、「e-Call(緊急通報システム)の搭載義務化が進みつつある欧州の車載インフォテインメント機器メーカーが、e-Call向けに新たにセルラー系テストに対応するため、WTSを導入するケースが相次いでいる。その1社であるPeikerでは、WTS導入によりテスト費用を25%以上削減することができたという事例が早くも出てきている。WTSは最新のデバイスが使えることで、処理時間が短く、テスト時間を短縮できる。コスト的にも、汎用的なモジュールを使っていることなどから、競争力がある。WTSをきっかけに、モジュール式計測器の製造現場での利用が拡大することを期待している」としている。

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