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NECの飯島特別主席研究員らが、カーボンナノチューブで欧州発明家賞を受賞部品/材料 カーボンナノチューブ

NECで特別主席研究員を務める飯島澄男氏らの開発チームは、欧州特許庁(EPO)から「欧州発明家賞」を受賞した。カーボンナノチューブの発見およびその製造方法を発明した功績が認められた。

» 2015年06月12日 16時45分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 欧州特許庁(EPO)は2015年6月11日、2015年度「欧州発明家賞(European Inventor Award)」を発表した。今回は「非ヨーロッパ諸国部門」で、NEC特別主席研究員を務める飯島澄男氏らの開発チームが欧州発明家賞を受賞した。カーボンナノチューブの発見および製造方法を発明した功績が認められた。

 欧州発明家賞は、技術的、社会的、経済発展に貢献した発明家に対して、EPOが毎年授与しているもので、今回で10回目となる。同賞は、「産業部門」、「研究部門」、「中小企業部門」、「非ヨーロッパ諸国部門」及び「功労賞」の5つの部門と、一般からの投票で決まる「Popular Prize(人気賞)」で構成されている。飯島氏および小塩明氏、湯田坂雅子氏の研究チームは、非ヨーロッパ諸国部門で日本人初の受賞となった。2014年度には、人気賞の部門でデンソーウェーブの原昌弘氏らがQRコード開発者として受賞しており、日本の発明家が2年連続受賞したことになる。

2015年度欧州発明家賞を受賞した開発チーム。左から小塩明氏、飯島澄男氏、湯田坂雅子氏

 EPOの長官を務めるベルノー・バティステリ氏は授賞式会場で、「飯島氏らによる研究のおかげで、宇宙エレベータやナノ粒子を用いて病変部位にピンポイントで治療を行うなど、未来志向のアイデアが現実化できる」、「カーボンナノチューブの社会的及び経済的な効用は、その多岐にわたる応用範囲のおかげで甚大なものである。現在はまだ開発の初期段階にあるが、カーボンナノチューブは航空宇宙技術や生物医学に大変革をもたらす潜在能力を秘めている」とコメントした。カーボンナノチューブの市場は、2016年までに全世界で9億1300万ユーロ規模に成長するとの試算もある。

 カーボンナノチューブは、鋼鉄より強い強度を備えている、チューブの構造状態や層数など、形状や製造方法によって半導体や金属になりうる、熱的特性に極めて優れているなど、ユニークな特性を数多く備えた材料である。ポリマーや金属といった素材は、カーボンナノチューブを加えることで、吸着剤としての性能を著しく向上させることができる。この特性を生かし、ソーラーモジュールはより効率的に、コンピュータはより高速に、自動車や航空機向けの部品はより頑強にすることができるという。

 今回の受賞は、カーボンナノチューブの発見と同時に、プラズマを用いて適切な製造方法を開発したことも評価された。炭素棒を高温のプラズマで蒸発させることで、高品質・高純度のカーボンナノチューブを生成することが可能となった。

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