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半導体テストの新時代――柔軟で低コストな手法とは

半導体テストに要する時間やコストを抑えることができない。特にアナログデジタル混載半導体やRF半導体では仕様の幅が広く、テスト項目の変更もしばしばだ。従来の半導体自動テスト装置(ATE)とは異なる特徴を備えた新しい半導体自動テストを紹介する。

» 2015年09月08日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 半導体の機能、性能が高度になるにつれて、テスト工程に要する時間やコストは増える一方だ。効率よくテストを進め、コストを削減するにはどうすればよいだろうか。

 半導体テストの手法は大きく2つに分かれる。広く普及している手法は、特定の半導体に特化したテストシステムを導入することだ。半導体自動テスト装置(ATE:Automated Test Equipment)を使う。ATEはテストが必要な半導体の種類がごく限られており、テスト内容があまり変わらない場合に適する。具体的にはメモリなどデジタル中心の半導体に向いているだろう。

 もう1つの手法は、柔軟性のあるオープンな自動計測ソフトウェアやハードウェアを使用することだ。ナショナルインスツルメンツ(NI)が2015年8月3〜6日に米国テキサス州オースチンで開催した「NIWeek 2015」では、この手法をとり入れた企業の事例が複数あった。

Intelが自社製テストシステムから離れた理由とは

 Intelが抱える半導体テストの新しい課題とは、多品種少量生産。同社はウェアラブルデバイス向けの半導体開発に注力しており、2015年1月にはSoC「Curie」(図1)を発表、2015年3月にはスマートウオッチの市場投入を計画するスイスTAG Heuerと協業した。

図1 Intelのウェアラブル向けSoC「Curie」

 「ファッションで大切なのは多様性だ。ウェアラブル向けの半導体の仕様は複雑になる。ハイミックステストが必要となるため、単一の半導体に特化したテストシステムでは役に立たない」(IntelでVice President, New Devices Groupを務めるMinoru Taoyama氏)。

 今後、半導体テストシステムに求められる要件は大きく2つあるのだという。1つは、先ほどの発言にあるように幅広い製品への対応だ。同時に、製品Aから製品Bへすばやくテストの切り替えが可能でなければならない。

 ウェアラブルとはいっても、めがねや時計、靴など製品の形態はさまざま。SoCを組み込む製品ごとに利用する無線通信の組み合わせは異なってくる(図2)。これがハイミックステストが必要な理由だ。

図2 ウェアラブル向けではハイミックステストが必要

 もう1つの要件はテストの標準化だ(図3)。「これまでは製品ごとにテストシーケンスが異なっていたため、テスト用ソフトウェアを内製してきた。だが、ウェアラブル向けのハイミックステストには対応できないだろう。スケーラブルではないからだ。今後はNIのテスト管理ソフトウェア『TestStand』に基づいて標準化する」(同氏)。

図3 テストの標準化を進める

テスト時間を30%短縮したCirrus Logic

 米Cirrus Logicの事例では、従来のATEと比べてテスト時間を短縮できたことが特長だ。

 同社でProduct Test Engineerを務めるJohn Cooke氏は、NIがオープンな自動計測プラットフォームであるPXIをベースに開発し、2014年にリリースした半導体テスト装置「STS(Semiconductor Test System)」を導入した効果をこう語った(図4)。「従来のATEをレンタル契約で導入するよりも、NIのSTSを購入する方が安価だという結論に達し、全てのオーディオシグナルプロセッサ製品ラインに適用できると考えた。導入後、当社の基準と比較してテスト時間を30%短縮できた」(同氏)。

図4 STSの導入経緯について語るJohn Cooke氏(左)

STSの強みはソフトウェアにある

 STSはNIがこれまで提供してきた自動テスト用のオープンなハードウェアとソフトウェアをベースにして開発した半導体テスト装置*1)。「PXI」をベースとして、製造ラインでテストヘッドとして実装できるようにケーシング、ドッキングの機能を搭載している。テスト管理ソフトウェアである「TestStand」上にあらかじめ用意されたテストステップを並べていくことで、テストシーケンスを短期間で作成、デバッグ、編集できる半導体テスターとなっている(図5)。

*1) システムエンクロージャーに18スロットのPXIシャーシを1〜4台格納し、標準的な半導体用ドッキングとインタフェースを搭載したもの。同時に検査できる半導体の数によって3種類の製品に分かれる。STS T1 System(1個)、同T2(2個)、同T4(4個)。

図5 STSのシステム構成

 NIによれば、STSはアナログデジタル混載半導体やRF半導体のテストに向いているという。半導体の仕様が変わった場合にも容易にテスト内容を組み替えることができるからだ。従来のATEを利用して仕様の変更をベンダーに依頼した場合、カスタマイズが必要なため大幅な工数と費用が発生する。STSであれば、オープンなPXIをベースとしたシステム構成になっているため、ユーザ側でも、NIに依頼したとしても、モジュールを組み替えることで比較的短時間で仕様を変更できる。

 同社のPresident兼CEOであるJames Truchard氏は、STSの強みを3つ挙げた。「1つはソフトウェア、もう1つは性能強化がたやすいことだ」。第3の強みはサポートだ。「より多くの顧客をサポートできるようとり組んでいるところだ」(同氏)。顧客の要望に応じて3種類の製品サービスを設けた。

 STSの強みはテスト項目やシーケンスをソフトウェアで定義していることにある。計測と制御にPXIを利用しているため、ボードを交換することで、ハードウェア性能を高めやすく、その際にソフトウェアの書き換えは必要ない。

 2014年に提供を開始したSTSに対するユーザ企業の評価は高いという。同氏はPXIとソウトウェアを組み合わせたシステムを拡充していきたいと発言。2015年夏に市場に投入した無線テスター「WTS(Wireless Test System)」は、STSと同じコンセプトの製品であり、STS同様の強みを発揮できるとした。

 PXIは1997年に市場に投入されて以来、検査ラインでの実績を着実に積み重ねてきたプラットフォームである。STSではPXIをベースとしたシステムであるというメリットを享受できる。さらに従来のATEベンダーと同じように製造ライン特有のニーズを満たすサービスをNIが前面でサポートする。こうした点で、これまでのNIの製品とは位置付けが異なっている(図6)。

図6 STSはPXIベースの半導体テスターである

 そのため、テスターとしてのエコシステムも重要であり、例えば米Reid-Ashman Manufacturingは、STS用の支持装置を開発。検査ラインに被せるようにSTSを配置できるという(図7)。

図7 STS用の支持装置と組み合わせた展示を見せた

テスト項目を削減できるサービスあり

 NIWeek 2015の基調講演では、イスラエルOptimal PlusのVice President, Product Managementを務めるKeith Arnold氏が登壇。半導体テスト項目を削減するには、半導体テスト時の情報を即座に活用することが肝要だと主張した。

 Optimal Plusは、STSのような半導体テスト装置からテスト時の各種データを受けとり、自社のサーバに格納するサービスを提供する企業。「半導体のテスト時に自社でテストデータを記録する企業は多い。だが、集めたデータを即座に活用するすべを持たない場合が目立つ。当社のサービスはテスト情報の活用に役立つものだ」(同氏)。

 具体的には、まずOptimal Plusのサーバに集まるデータをリアルタイムで統計処理する。これによって、省略できるテスト項目を洗い出すことができるという。次に半導体テスト装置に対して、制御コマンドを送信し、省略できる項目をスキップする(図8)。以上の全ての状況を顧客が監視でき、改善の度合いを評価できる。このようにして、テスト時間やスループットを改善できるという仕組みだ。

図8 各地に散らばるSTSからテストデータを収集、蓄積する他、リアルタイムにSTSを制御できる

 「当社のOptimalTestソフトウェアとNIのTestStandをわずか2週間で組み合わせることができた。当社のシステムでは検査情報を『チップDNA』として保管するため、競合製品と比較して可視化、トレーサビリティ、予知分析に優れている」(同氏)。

 IoTデバイスやRFICはこれまでの半導体と比較して多機能で多品種になるため、製造コストを削減できたとしてもテストコストの増加が大きな課題になる可能性がある。海外の半導体主要ベンダーがTestStandやSTSのような柔軟性のあるテストソリューションを導入し、テストコストの大幅な削減に成果を上げ始めている。日本の半導体ベンダーもテストコストについて再検討する価値があるだろう。


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月30日

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