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» 2015年10月21日 12時30分 公開

DSRCが主流の中で:「LTE V2X」は新たな規格係争の火種となるのか (2/2)

[Junko Yoshida,EE Times]
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自動車メーカーはLTE V2Xを必要としているのか

 ここで、ある疑問が生じる。自動車メーカーは、これまで15年以上にもおよぶ長い年月をかけて検討してきたDSRCを、自社の車で採用することについて、何か問題があると考えているのだろうか。

 Huaweiでコネクテッドカー担当テクニカルディレクタを務めるJiansong Gan氏は、「自動車メーカーから、代替となるV2X技術を開発してほしいと頼まれたのか」とするEE Timesの質問に対し、一瞬ためらいを見せながらも、「とてもいい質問だ」と答えた。

 しかし同氏は、「LTEベースのV2Xを推奨するメリットとしては、既存のLTEセルラーネットワークインフラを使えるという点が挙げられる。DSRCをサポートする上で、新たにV2Xインフラを構築する必要がないのだ」と答えるにとどまった。

 またGan氏は、中国国内での5.8GHz帯DSRCをめぐる潜在的な干渉問題についても取り上げ、「中国には、別のV2Xソリューションが必要だ」と語る。中国の標準化団体CCSA(China Communications Standards Association)は既に、中国国内において、LTEベースのV2Xに向けたワークアイテムを開始しているという。

 米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsで無線通信戦略担当シニアアナリストを務めるGuang Yang氏は、DSRCとLTE V2Xの間に新たな争いが生じていることについて問われると、「V2Xに関しては、今のところまだDSRCが主流だ。技術的な見地からみても、DSRCには何も問題がないといえる」と述べる。

 Yang氏は、「V2X向けLTEの主要な目標は、必ずしもDSRC関連の問題を解決することだけとは限らない。むしろ、セルラー業界に向けて新しいビジネスチャンスを作り出すという点にもある」と説明する。

DSRC対LTE V2X

photo 画像はイメージです

 では、DSRCとLTE V2Xをめぐる問題について分析してみよう。

 HuaweiのGan氏が指摘した通り、LTE V2Xの最大のメリットは、既存のセルラーインフラと周波数帯域を利用できるという点だ。Strategy AnalyticsのYang氏は、「通信事業者は、専用の路側機(RSU:Road Side Unit)を導入したり、特定の帯域を割り当てたりしなくて済む」と指摘する。

 一方DSRCは、IEEE 802.11aをベースにしているIEEE 802.11pに基づいている。DSRCは、IEEE 802.11規格に、自動車環境および通信システムにおける無線アクセスを追加した、修正版として承認されている。Yang氏は、「DSRCは基本的に、無線LANベースの技術だ。このため理論的には、LTEの方が、DSRCよりも高い品質のサービスを提供できるといえる」と述べる。

 その一方でYang氏は、「LTEベースのV2X技術は、無線LANよりも複雑な上、市場規模も小さい。DSRC規格は既に準備が整っているが、LTE V2Xは、まだ研究段階にある。LTEは今後、さらなる成果をもたらす可能性があるが、新たな問題を生じさせる恐れもある」と指摘する。

 ただ、V2XにはLTEの方が適していると誰もが確信しているわけではない。特に、危機的状況に陥った場合にはなおさらのようだ。

 AutotalksのCEO(最高経営責任者)であるNir Sasson氏は、EE Timesのインタビューに対し、「東日本大震災が発生した2011年3月11日、私は日本に滞在していた。その時、妻にテキストメッセージを送信するのに20分以上もかかってしまった」と述べる。

 Sasson氏は、日本のセルラーサービスがいかに機能停止に陥ったかを思い起こしながら、「V2X向けセルラーネットワークインフラに依存すべきだとは思わない」と語った。

 Autotalksは、STMicroelectronicsと協業してV2Xチップセットシリーズを提供している。Autotalksは2017年までに、さらなる普及拡大を目指し、マスマーケット向けに最適化したV2Xチップセットを提供する予定だ。

 LTE V2Xの標準化に向けた道のりは長い。商用化となると、なおさらだ。LTE V2Xは現在、3GPPにおいて調査を行っている段階である。Strategy AnalyticsのYang氏はEE Timesに対し、「3GPPのRelease 14では、正式な標準化に向けてワークアイテムとなるだろう」と話した。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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