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スマホに超解像技術を搭載したらどう見えるのか工学院大学独自の非線形信号処理方式(1/2 ページ)

工学院大学 情報学部情報デザイン学科 合志清一教授の研究グループは、スマートフォン上でリアルタイム再生が可能になる超解像技術の開発に成功したと発表した。同技術が組み込まれたスマートフォン「arrows NX F-02H」が2015年12月上旬に販売されるとしている。

» 2015年11月24日 10時00分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

 工学院大学 情報学部情報デザイン学科 合志清一教授の研究グループは2015年11月、富士通との共同開発により、スマートフォン(以下、スマホ)上で映像のリアルタイム再生が可能になる超解像技術の開発に成功したと発表した。

 同技術は、独自の非線形信号処理方式を採用。非線形信号処理方式は以前から発表されている方式で、2012年には4Kテレビ向け、2013年には4K映像を8K化する技術が発表されている*)。今回は、非線形信号処理方式のシンプルなアルゴリズムと、富士通の技術を組み合わせたことで、今までスマホに実装されていたCPUやGPUにソフトウェアを追加するだけで超解像技術のスマホ搭載を実現したという。これにより、映像再生中に超解像技術を利用し、高精細でボケのない映像を30フレーム/秒で再生することができる。合志氏は、「現在は映像再生のときのみ超解像技術を利用できるが、今後はあらゆる画面表示においても技術的には利用が可能である。4K映像に対しても有効的だ」と語った。

*)関連記事:『「理論限界を超える高精細化を実現」、4Kテレビ向け超解像で工学院が新提案』、『国内TVメーカーにはどう見えるのか? 工学院大が“真の超解像技術”で4K映像を8K化

 なお、NTTドコモの2015-2016冬春モデル「arrows NX F-02H」に、同技術が組み込まれる。NTTドコモのWebサイトによると、発売予定は2015年12月上旬である。

超解像技術を搭載したスマホ(画像上)と従来スマホ(画像下)との比較 (クリックで拡大)

非線形信号処理とは?

工学院大学教授の合志清一氏

 同研究グループが開発する超解像技術は、エッジ検出し、簡単な非線形処理を行うことで、映像のナイキスト周波数*)を超える高精細成分の画像を再生可能にするという。合志氏は、「当研究グループの技術は、リアルタイム映像として利用することしか考えずに研究をしていく中で、コロンブスの卵的に生まれた。処理時間も従来技術と比較して1000倍以上違う」と語った(詳細な説明は上記関連記事を参照)。

*)ナイキスト周波数とは、アナログ画像をデジタル画像に変換する工程で標本化をするときに、そのサンプリング周波数の1/2に相当する周波数である。

周波数スペクトラムの分布が読み取れる2次元フーリエ変換の結果。「従来の技術は周辺の成分が濃くなるだけだが、当研究グループの技術は元画像の分布よりも大きく広がっている。つまり、ナイキスト周波数を超える高精細成分が生成されているのだ」(合志氏)という (クリックで拡大) 出典:工学院大学

 市販されているテレビにも超解像技術はよく搭載されているが、合志氏は「エッジ成分を大きくして高画質化を行っているだけ」と強調する。学術的には、「再構成超解像」と呼ぶが、ローパスフィルタ(ぼかし)が効いていなく、単に画素が間引きされた縮小画像を多く組み合わせただけという。データベースに保存された情報と比較し、高解像度化を行う「学習型超解像」もあるが、リアルタイム性に欠けるとした。

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