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有機CMOSセンサー、ダイナミックレンジ100倍高感度セルと高飽和セルの2セルで1画素を構成(1/2 ページ)

パナソニックは、有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーのダイナミックレンジを、従来のイメージセンサーに比べ100倍拡大できる技術を開発した。明暗差のあるシーンを鮮明に撮影することが可能となる。

» 2016年02月04日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 パナソニックは2016年2月、有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサー(以下、有機CMOSイメージセンサー)のダイナミックレンジを、従来のイメージセンサーに比べ100倍拡大できる技術を開発したと発表した。

 有機CMOSイメージセンサーは、光電変換を行う有機薄膜と、信号電荷を蓄積して電気信号の読み出しを行う回路部を、それぞれ独立して設計できる特長がある。一般的には受光部にシリコンフォトダイオードが用いられている。これに比べて、光吸収係数が大きい有機薄膜を採用することで、膜厚を0.5μmまで薄くすることができる。これにより、入射光線範囲は60°(従来は30〜40°)に広がり、入射光を効率よく利用することができ、忠実な色再現を可能とした。

 有機CMOSイメージセンサーは、画素内のトランジスターや容量などの回路部の上に、有機薄膜を積層する構造となっている。このため、全面に有機薄膜を形成することが可能となり、遮光膜が必要な従来型イメージセンサーに比べて、感度は1.2倍に向上する。

左は従来の裏面照射型CMOSイメージセンサー、右は有機CMOSイメージセンサーの画素構成イメージ (クリックで拡大) 出典:パナソニック

 また、積層する有機薄膜によって波長や感度など、光を電気信号に変換する時の特性を自由に設定することが可能となる。さらに、信号電荷を蓄積するための容量を大きくすることで、蓄積電荷の飽和値を飛躍的に増大させることも可能である。

 今回開発した有機CMOSイメージセンサーは、広いダイナミックレンジを実現するために画素構成を工夫している。1画素内に「明」と「暗」それぞれの感度に対応する2つのセルを備えた、1画素2セル構成の技術を開発した。2種類のセルとは、高感度画素電極+小蓄積容量+容量結合型ノイズキャンセル構造の「高感度セル」と、低感度画素電極+大蓄積容量+従来型ノイズキャンセル構造の「高飽和セル」である。1画素を2セル構成とすることで、123dBというダイナミックレンジを実現した。これは、従来のイメージセンサーに比べて100倍に相当するという。

1画素2セル構成のイメージ (クリックで拡大) 出典:パナソニック

 明るいシーンと暗いシーンを異なる構成のセルで同時に撮像することにより、明暗差の大きい場所/場面でも1回の撮影で、白とびや黒つぶれの少ない鮮明な映像を撮影することが可能となる。

1画素2セル構成を用いた有機CMOSイメージセンサーで撮影した一例 (クリックで拡大) 出典:パナソニック

 容量結合型ノイズキャンセル技術は、暗い被写体を撮像する時、S/N特性を向上させるために画素リセット時のノイズをキャンセルすることが可能な技術である。列ごとに設けた負帰還ループで、画素ごとにリセットノイズを抑制する。また、容量結合型とすることで、負帰還制御のロバスト性を向上しつつ、リセットノイズを1.6電子まで抑制することができたという。

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