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無線充電の今、大電力の本命は?TECHNO-FRONTIER 2016(2/4 ページ)

» 2016年04月27日 13時00分 公開
[畑陽一郎EE Times Japan]

送受電パッドの新機軸「D-PAD」

 今回の電動フォークリフト向けの非接触充電システムでは、電磁誘導方式を用いている(磁界共鳴方式との比較については後ほど記述する)。

 電磁誘導方式で重要なのが、送受電パッドが内蔵するコイルの形状と構造なのだという。今回採用したD-PADと、それ以前の2つの方式の特長を図4に示す。伝送距離や伝送効率などいずれの性能もD-PADが優れていることが分かる。

 「D-PADの伝送距離が長く、伝送効率が高くなる理由は、磁束がパッドから離れるように弧を描き、パッドの裏側に回り込む磁束がほとんどないからだ」(布谷氏)。受電パッドに届いた磁束が電力の伝送に使われるため、高い性能を発揮できる。

図4 3種類のパッドの特徴 出典:ダイフク

 図5に、3種類のパッドの磁束の様子を示した。磁束を緑色の矢印で示している。円形パッドでは中心部に平面コイルを巻かず、そこから周辺に磁束を飛ばす配置を採った。すると、パッドの半径の長さを使うことしかできず、磁束がコイルの近くを通る。高さが足りない。つまり伝送距離が短くなる。磁束の漏れも多い。

 ルークパッド*2)は左右のコア間を磁束が飛ぶため、距離を長くとることができ、伝送距離が増える。しかし、背面にも磁束が回り込むために効率が悪くなる、発熱する。効率の悪さは材料コスト増となって跳ね返ってくる。

 「D-PADではフェライトへのコイルの巻き方を工夫した。中心部は水平にコイルを巻き、その後空間を空けて、端面近くでは垂直に重ねてコイルを巻いている。フェライトのうち、コイルが巻かれていない2カ所の間、それも表側だけで磁束が飛ぶため、伝送距離が長くなり、効率も高くなる」(布谷氏)。

*2) 「チェスのルーク(城)の駒と形が似ていることから名付けられた」(布谷氏)。D-PADは、送受電パッド内のコイルの形状がD形であることから名付けられたという。

図5 3種類のパッドと磁束の配置

今後の開発の方向性は2つ

 ダイフクは、オークランド大学(ニュージーランド)の営利会社であるAuckland UniServiceと2012年に「D-PAD」について技術提携とライセンス契約を結んでいる*3)。これまでD-PADの使用用途の調査を進めてきており、この成果が、今回の電動フォークリフトとなった。

 今後の開発の方向性は2つあるという。「(後ほど紹介する)高い結合率kを備えた送受電パッドを開発し、D-PADを小型化、コイルと磁性体の原材料を減らすことによってコストを低減したい」(布谷氏)。

 もう1つはより進んだ人体防護だという。人体防護の考え方は、人体に影響を及ぼさないよう電磁界の強さを抑えたり、安全な距離・位置を明示することにある。今回の製品はWHOのICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインに従っており、充電中の電動フォークリフトに近づいてもよい距離を明示している。日本不整脈学会のペースメーカーに関する指針に基づいた試験も実施した。「今後は、警告を無視して近づくヒトや生物体を検知し、自然に充電を止める技術開発が必要だ」(布谷氏)。

*3) 半導体製造ラインや液晶搬送装置に用いた無線給電技術「HID(ヒッド)」は、1992年に同大学と技術提携、ライセンス契約を締結して製品化したもの。

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