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半導体業界の研究開発費、M&Aで減少傾向に?成熟期に入ったからなのか(2/3 ページ)

» 2016年08月01日 11時30分 公開

「買収して売却」というAvagoの手法

 旧AvagoはLSI社を買収したが、その後、LSIのネットワーク向けチップ事業をIntelが6億5000万米ドルで買収した。さらに、LSIのフラッシュストレージ関連事業をSeagate Technologyが4億5000万米ドルで買収している。旧Avagoは、これらの事業をIntelとSeagateに売却することで、より優先度の高いビジネスに投資するための資金として10億米ドル以上を得ることができた。この場合、IntelとSeagateが、ネットワーク向けチップ事業とフラッシュ事業を、旧Avagoよりもはるかに高く評価したため、合併買収によって、半導体研究開発費全体が実質的に増加したと考えられる。

旧Avago Technologiesが買収した事業はIntelとSeagate Technologyに売却された(クリックで拡大)

 半導体業界にとっては、こうして営業経費を削減することにより、研究開発費を増やして、潜在的な売上高増加と製品開発の促進を実現しながら、効率を改善するためのチャンスを得ているようにみえる。

 一方で、営業経費の削減を確約すれば、投資家たちは、研究開発費を削減し、それに伴って開発やマーケティング、新製品のサポートなどに携わる人員数が削減されると見るだろう。

 過去1年以内にも、少なくとも1件の大規模な合併買収において、このような確約がなされている。

エンジニアの再就職率は高い

 これはつまり、半導体業界がついに成熟期に入ったということなのだろうか。成熟期では一般的に、売上高成長が鈍化する中で利益を増加させるべく研究開発費の削減が求められる。確かに、成熟期に達したのかもしれないが、他にも分析すべき問題はまだある。

 1つ目は、製品開発に携わる全ての研究開発エンジニアたちが、合併によって職を失うことになった場合、どうなるのかという問題だ。このようなエンジニアたちは、生涯にわたって失業することになるのだろうか。下の図を参照してほしい。

エンジニアの完全雇用率(クリックで拡大)

 エンジニアの失業率は、わずか1%と非常に低く、過去15年間の平均も約3%である。エンジニアは、企業を離れても、迅速かつ確実に別の仕事を見つけられるといえる。

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