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Fordが“完全な”自動運転車の開発を本格化へアナリストからは疑問の声も(2/3 ページ)

» 2016年08月29日 14時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

米国自動車市場は縮小?

 米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsのグローバルオートモーティブ部門でアソシエートディレクターを務めるRoger Lanctot氏は、以前に自身のブログの中で、「自動車メーカーは、カーシェアリングによって自分たちがどのような状況に陥ることになるのかを理解しているのだろうか」と疑問を投げ掛けている。

 同氏は、「カーシェアリングや配車サービスはいずれも、自家用車による移動を、ネットワーク化された公共交通機関へと変化させることを目的としている」と指摘する。自家用車と公共輸送用車両の比率を頭の中で計算してみれば、この目標がいかに難しいかがよく分かるだろう。

 Lanctot氏はブログの中で、かつてGM(General Motors)の研究開発担当コーポレートバイスプレジデントを務めた経歴を持つLarry Burns教授が、Mentor Graphicsが最近開催したイベント「IESF(Integrated Electrical Solutions Forum)」において登壇した時の発言を引用し、もう1つ別の問題を提起している。

 Lanctot氏は、「Burns氏によると、米University of Michiganの研究結果から、1万8000台の自動車をネットワーク接続して共有すれば、既存の自動車12万台に相当するモビリティーを提供できることが明らかになったという。つまり、現在路上を走行している自動車全体の15%を使用するだけで、現地のモビリティー需要に対応できるということになる。自動車メーカーにとっては、良くないニュースだといえる」と述べる。

 このデータが正確であれば、自動車メーカーは、ロボットカーの研究開発に注力しながら、かつてないほどに縮小していく市場を必死に追い求めているということになる。

 率直に言うと、Fordのような自動車メーカーが完全自動車の実現に向けて本格的に取り組まざるを得ないのは、未知なる市場に対する恐怖心からではないだろうか。今のところ、カーシェアリングが自家用車保有率に対して及ぼす影響について、具体化することができた市場調査データはまだ存在しない。さらに、完全自動運転車を購入したいと考えるユーザーの数や、その市場規模の大きさなどを算出したデータもないのだ。

米国では自動車の保有率が減っている(クリックで拡大) 出典:Michael Sivak, University of Michigan Transportation(2014年1月)

 しかし、自動車メーカーのこうした恐怖心を正当化する要素が2つある。1つは、米国内でさえも自家用車保有率が減少しており、ドライバーの運転量も減っているという点だ。

 2つ目は、世界のベンチャーキャピタルによるカーシェアリング/配車サービスへの投資が、かつてないほどに増加しているという点だ。

配車サービスへの投資額は増加している(クリックで拡大) 出典:McKinsey & Co.

 つまり、輸送市場における“変化”を嗅ぎつけるのに、特別な才能は必要ないのである。

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