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不揮発メモリ、業界の協業関係に変化をもたらす転換点を迎えつつあるメモリ業界

さまざまなシステムにおいてメモリを適切かつ確実に動作させる上で、標準規格や仕様の策定は非常に重要だ。しかし、技術が進展して、メモリとストレージが融合するようになると、メーカーと顧客企業の間の協業関係に変化が生じてきている。

» 2016年09月14日 15時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

転換点を迎えつつあるメモリ業界

 このような新しい形の協業体制の一例として挙げられるのが、Micron Technology(マイクロン テクノロジー)が2016年初めに、米国テキサス州オースティンを拠点として開設した、「Micron Storage Solutions Center(MSSC)」だ。同社のストレージソフトウェアエンジニアリング部門でバイスプレジデントを務めるSteve Moyer氏は、EE Timesの電話インタビューの中で、「業界は今、不揮発メモリ/フラッシュメモリが新しいストレージ技術として出現するという、転換点にある。このため、当社は2年半前から、全社的な取り組みを本格化させた。現在、エンタープライズストレージ市場に変化が生じている」と述べている。

Micron Technologyのデータセンター向けSSD製品 出典:Micron Technology

 Moyer氏は、「不揮発メモリ技術は現在、主要なストレージメディアへと移行しつつある。このため、メディア機能とうまく連携できるよう、ストレージスタックの設計を受け入れながら、アプリケーションの調整を行うことが重要だ。導入の選択肢に変化が生じているため、もはや単なる高速ハードドライブではなくなった」と述べる。

 NVM Express(NVMe)の中でも、特にNVMe SSDは、NVMeのエコシステムが成熟するに伴い、大きな注目を集めている。業界では、ハードドライブと同じ手法を用いるのではなく、SSDのメリットをうまく活用することができるストレージシステムの構築に向け、本格的な取り組みが始まっている。Moyer氏は、「当社は、これまで60年にわたり、ハードドライブの周辺にストレージスタックを構築してきた」と述べている。

 また同氏は、「ストレージとして機能する不揮発メモリは、かなり大きいソフトウェアコンポーネントを搭載する。顧客企業のアプリケーションを最上部に、メモリを最下部に備えるアプリケーションスタックの他、ファームウェアやコントローラーなども搭載する。これら全てが、顧客企業のメモリ技術に対する知識や経験に影響を及ぼすことになる」と付け加えた。

 「DRAMは現在も、ソリューション全体の中の非常に重要なコンポーネントである。今後、DRAM向けに開発されたアプリケーションスタックが登場するとみられている」(同氏)

 Moyer氏は、「Micronは、新しいSSDを投入する度に、顧客企業が関心を持っている主要なアプリケーションに焦点を当てなければならない。つまり、例えばHadoopファイルシステムのような、特定の作業負荷に対してどのようにSSDを導入するのがベストなのかをアドバイスできるよう、大量の作業負荷分析を行う必要があるということだ。この場合、ハードドライブからSSDへの移行は、単なるチューニングだけでなく、従来とは異なる導入方法が必要だということになる」と説明する。

協業に価値見いだすDiablo Technologies

 顧客企業とさらなる協業体制を構築することに価値を見いだしているのが、メモリベンダーDiablo Technologiesだ。同社は2016年6月、米国カリフォルニア州サンノゼに「ISV Development and Customer Experience Center」を設立した。同社のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるKevin Wagner氏は、「同センターは、実践的なデモや、顧客企業と共同でさまざまな活動を行うための、主要ハブとして機能する予定だ。Diablo TechnologiesのOEM企業のサーバを設置しているため、ソフトウェア開発やアプリケーションエンジニアリング、技術サポートなどを共同で提供するような環境を実現できる」と述べる。

 Diablo Technologiesが、米国カリフォルニア州サニーベールにISVセンターを設立した当時は、約6台のラックサーバと十数台のデスクトップPCで構成されていたという。Wagner氏は、「ISVの設立により、過密スケジュールで非常に忙しく、アプリケーションエンジニアたちは、設置やコードのテスト、コードのチューニング、最適化などをサポートしていた」と述べる。

 Wagner氏は、「現在は、メモリやストレージをシステム内で確実に機能させる上で、必ずしも高度な協業体制が必要というわけではない。例えばSATA SSDは、かなりコモディティ化されており、既知のストレージと連携している。このため、SSDによって性能が異なる場合があるが、それに関連したソリューションを構築する必要はない。SATA SSD上のアプリケーション向けにアーキテクチャを構築する場合も、既によく知られている方法を適用できる」と述べる。

 「しかし、AMDの64ビットアーキテクチャのような新しい技術の場合は、OEM企業に対して、なぜそのアーキテクチャに移行する必要があるのかを明示することが重要だ。もし自分がその立場に置かれたら、このようなサポートは非常に役立つと思う。」(同氏)

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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