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千載一遇のチャンスだったルネサスのIntersil買収会見詳報(1/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスは2016年9月13日、米国の半導体メーカーであるIntersil(インターシル)を32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。同日、ルネサスは都内で記者会見を開き、社長兼CEOの呉文精氏らが登壇。買収の狙いや、見込めるシナジーについて説明した。

» 2016年09月13日 17時20分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

文化的な親和性も高い

 Analog DevicesによるLinear Technology買収のように、アナログ半導体業界は寡占化が進んでいる。Intersilの買収は、一石を投じる千載一遇のチャンスだった――。

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2016年9月13日、米国の半導体メーカーIntersil(インターシル)を32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。同日、ルネサスは都内で記者会見を開き、社長兼CEOの呉文精氏らが登壇した。

 Intersilは、産業やインフラ、車載、航空宇宙向けなど信頼性や性能が重視される市場向けに、パワーマネジメントICや高精度アナログなどのアナログ半導体製品を展開している。売上高は2015年12月期実績で5億2160万米ドル(約522億円)。ルネサスが買収する狙いは、これらのパワーマネジメント関連製品のラインアップ拡充にある。

 ルネサスも製品別割合でみると、約10%アナログ半導体を展開している。同社執行役員常務兼CFO(最高財務責任者)の柴田英利氏は、「Intersilのアナログ半導体と全く別という表現はできないが、相互補完的な関係である」と語る。「Intersilもルネサスと同様に、戦略分野に経営資源を集中し、人員削減と非効率の排除を行ってきた。このような歴史的な背景も含めて、文化的な親和性が高いと判断した」(柴田氏)としている。

Intersilもルネサスと同様に、経営陣が主導する構造改革により、事業の質的改善に成功。柴田氏は、「企業の歴史なども含めて、ルネサスと文化的な親和性が高い」と語る (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 買収の狙いは、パワーマネジメント製品の拡充だけではない。呉氏は、ルネサス本体の経営のグローバル化も目指すとする。「Intersilという米国のグローバル企業を買収したが、本社が閉鎖的な日本村の企業では事業がうまく進まない。当社がクローバル化して、意思決定のプロセスが誰から見ても分かりやすい仕組みを作っていかなければならない。具体的には、会議などの英語化を進めていく」(呉氏)とする。

営業利益170億円のシナジーを

 呉氏は、「最初に得られるシナジーは、クロスセルの強化だ。ルネサスは国内の拡販に強く、Intersilは中国の電機メーカーを中心とするアジアに効率的に拡販を行っている。他にも、ルネサスは車載、Intersilは広い顧客に向けた汎用品に強みを持つ。つまり、相互補完的な関係となっているため、早期のシナジーが期待できる」と語る。

クロスセルによるシナジー (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 今後2年間で両社は、クロスセルの強化を進める。その後は、ルネサスのマイコン、SoC(System on Chip)とIntersilのパワーマネジメント製品を組み合わせた1つのパッケージ「組み込みソリューション」として展開していく。

4〜5年後には、買収によるシナジーで170億円の営業利益を見込む (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 「組み込みソリューションは、開発から量産に入るまで、産業機器だと約3年、車載機器だと約5年くらいかかるだろう。つまり、フルにシナジーが出始めるのは、4〜5年かかる。それ以降は、年間約170億円の営業利益が生み出せると見込んでいる」(呉氏)

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