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“後発・ローム”がパワーデバイスで成長できる理由SiCはシリコンデバイス採用のトリガー(3/4 ページ)

» 2016年09月15日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

まずは車載から

EETJ SiCパワーデバイスはどのように普及すると見ていますか。

東氏 本格的な普及が始まるのは、自動車からだと考えている。しかし、現状、2020年頃のモデルは、シリコンIGBTで開発が進んでおり、SiCはそれ以降の普及になる。そのため、売り上げの柱になるのは、それ以降になると見ている。

 産業機器や白物家電領域では、「SiC inside」などをうたうようなフラグシップモデルでの採用は一定程度ある見込みだが、ボリュームゾーンは、コスト要求が強く、車載などでの普及が進むなどし、価格低減が進んでからだと思っている。

ロームの6インチSiC-SBDウエハー

 とはいえ、市場が形成されるのを待ってばかりもいられないので、SiCデバイスの耐圧を上げることで、新たな用途開拓を進めていく。現状、3300Vまでの耐圧を実現した。3300V耐圧であれば、並列使用だが、鉄道用途でSiC利用が可能になる。これを4500V、6600V、それ以上へとアップさせる。6600Vに達せば、鉄道用途の直列接続化が実現でき、電力系統の変圧器のメカニカルスイッチを置き換えることも可能になるなど、用途は拡大する。2020年以降の本格的な市場形成までは100万円を超えるようなシステム、装置向けがSiCパワーデバイスビジネスの中心になるだろう。

 もちろん、高耐圧化と並行して、素子性能の向上、低オン抵抗化を目指したトレンチ構造のSiC-MOSFETの開発を引き続き先行して行う。コストダウンに関しても、間もなくスタートする6インチウエハーによる製造や歩留り向上を図って進めていく。

SiCはシリコン採用のトリガー

EETJ 本格的な市場形成まで時間があり、大きな先行投資を強いられるSiCを手掛ける理由はどこにありますか。

東氏 SiCは、後発のパワーデバイスメーカーであるロームの製品を採用していただくための1つのトリガーだと考えている。

 最近、計画通りであれば5年間で300億円の売り上げになるような自動車でのIGBT、ダイオードの採用案件がまとまった。後発のわれわれが、このようなパートナーに選んでもらえるのは、SiCを展開しているからに他ならない。顧客は将来、SiCに移行することを念頭に置いているが、現状、SiCパワーデバイスメーカーの選択肢はあまり多くない。そこで“将来に備えてSiCをやっているロームと”という形で、採用いただいていることは間違いない。

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