メディア

高度な安全機能を備えた「ARM Cortex-R52」自律走行に必要なリアルタイム性能も実現

ARMは、次世代の自律走行システムなどの用途に向けたリアルタイムプロセッサ「ARM Cortex-R52」を発表した。「ARMv8-Rアーキテクチャ」を採用した最初のプロセッサとなる。

» 2016年09月23日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

「ISO 26262 ASIL D」と「IEC 61508 SIL 3」に適合

 ARMは2016年9月21日、高レベルの機能安全が求められる用途向けに、リアルタイムプロセッサ「ARM Cortex-R52」を発表した。「ARMv8-Rアーキテクチャ」を採用した最初のプロセッサで、車載/産業用機器向け安全規格「ISO 26262 ASIL D」と「IEC 61508 SIL 3」に適合するよう設計されている。

 Cortex-R52は、安全性に特化しつつ、リアルタイム性を担保したプロセッサで、現行の「ARM Cortex-R5」の上位製品と位置付ける。パワートレインやシャシー、先進運転支援システム(ADAS)といった車載用途を始め、医療/産業用ロボットなど、高レベルの機能安全が求められる用途に向ける。機能安全にかかわる承認手続きを簡素化することも可能になる。

 Cortex-R52は、ハードウェアでの仮想化に対応するハイパーバイザーをサポートしており、Cortex-R52上で複数のOSを動作させてもリアルタイム性を保証する。コンテキストスイッチの時間も短縮したという。100個を超えるECUを搭載した車載システムなどで、いくつかの機能を1個のECUに統合して、安全に運用する場合などに有効だという。

Cortex-R52は、ハードウェアでの仮想化に対応するハイパーバイザーをサポートしており、安全性に特化しつつリアルタイム性も担保する (クリックで拡大) 出典:ARM

エラーマネジメント機能を強化

 Cortex-R52は、Contex-R5に比べて「新しい特権レベル」や「レベル2メモリ保護ユニット(MPU:Memory Protection Unit)」「バスインターコネクトプロテクション」などの機能を新たに追加した。エラーマネジメント機能については強化を図ったという。

アームの中島理志氏

 アーム応用技術部のシニアマネジャーを務める中島理志氏は、「エラーの要因としては、偶発的なものとシステム的なものが定義されている。ARMはプロセッサのマイクロアーキテクチャによる対応だけでなく、開発プロセスに起因するシステム的エラーに対しても、セーフティマニュアルなどを用意し提供する。これらを活用することによって、ライセンシーはより早くマイクロコントローラー/SoCの製品立ち上げが可能になる」と話す。

 Cortex-R52は、Contex-R5に比べて性能面でも改善している。Green Hills Compiler 2017を使用したEEMBC AutoBenchでは、「クラス最高となる1.36Automark/MHzというスコアを達成した」という。DMIPSやCoreMarkなどの数値を比較しても「平均して20〜30%の性能改善になる」(中島氏)と語る。さらに、割り込み応答性は2倍、コンテキストスイッチは14倍高速とするなど、ベンチマーク以外の性能も大幅に向上した。

Cortex-R52とContex-R5の性能比較 (クリックで拡大) 出典:ARM

 Cortex-R52は最大4コアを内蔵することができる。ロックステップシステムについてはライセンシーが判断して、その構成や実装を決めるという。

Cortex-R52の回路ブロック概要 (クリックで拡大) 出典:ARM

STMicroelectronicsがライセンス取得

 Cortex-R52を製造するための推奨プロセス技術や動作周波数などの質問に対して、今回はコメントしなかった。また、パートナーとして対応するOSベンダー名なども公表できる段階ではないとして、明らかにしなかった。なお、STMicroelectronicsは、車載用SoCの開発に向けて、Cortex-R52のライセンスを取得したことをコメントで発表した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.