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» 2016年10月21日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(35) 人身事故:データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態 (6/11)

[江端智一,EE Times Japan]

うつ病による鉄道飛び込みは、もはや「病死」ではないか

 しかし、問題はそのような手続きや作業上の話ではなく、うつ病の原因を突き止めても全く意味がないことが分かってきたのです。

 これらの本や、うつ病患者の人のブログとかを読んでみた結果の、私なりの解釈は以下の通りです。

 ―― うつ病の中でも、特に自殺願望を伴う重篤なものは、『とにかく、理由もなく、死にたくて死にたくて、しょうがなくなる病気』である。

 それは、あたかも、飲まず食わずで3日3晩、山中をさまよい、家族のことも友人のことも何もかもを考える余地がなくなり、死ぬ理由さえどうでもよくなり、そんな時、「死」という甘美な果実を目の前にぶら下げられたら、当然そこに向かって猛烈な勢いで突進していく ――

 そういう、心底恐しい病気ということです(正直、自分で書いていて怖くなってきました)。

 つまり「うつ病による自殺」とは、「うつ病に至る『原因』や『理由』が自分を殺すこと」ではなく、「うつ病『そのもの』が自分を殺すこと」なのです。これは、もはや「自殺」ではなく、「病死」とか「事故」と呼ぶべきものでしょう。

 例えるのであれば、インフルエンザで死んだ人は、「インフルエンザウイルスを『感染させた人』に殺された」のではなく、「インフルエンザウイルス『そのもの』で殺された」のであって、そして、どんな経緯や理由があっても「インフルエンザで『自殺』した」というフレーズは存在し得ない ―― ということです。

 最近の研究で、うつ病は、特定の性格か気質を持った人だけに発病するのではなく、万人に平等に、いつでもどこでも発病しうる病気であることが分ってきました。そして、厄介なことに、どういうメカニズムでこの病気が発動するのかは、はっきりとは分かっていません。

 また現在、薬物療法なども有効に機能しているようですが、今なお、うつ病は発生原因も理由も、そして薬物がどのように脳や体に作用しているかも、(諸説あるのですが)検証できていない状況です。

 ともあれ、うつ病は発病したら負けです。万一、発病したら絶対に治療しなければなりません。なぜなら、うつ病は、私たちを殺しにくるからです

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