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IoTへの投資を加速するADI、エコシステムを重視SEMICON Japan 2016レポート(1/2 ページ)

Analog Devices(アナログ・デバイセズ)は、IoT(モノのインターネット)事業での取り組みを加速している。製品開発のみならず、画像センシング向けソフトウェアやセキュリティ技術を手掛けるメーカーと提携するなど、エコシステムの拡大にも積極的に着手している。

» 2016年12月19日 13時45分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

IoTへの注力を加速

 Analog Devices(アナログ・デバイセズ、以下ADI)は、2016年12月14〜16日に東京ビッグサイトで開催された「SEMICON Japan 2016」内の特別展「WORLD OF IOT」に出展し、同社のIoT(モノのインターネット)向け製品を展示した。

ADIでIoT戦略のディレクターを務めるJason Lynch氏

 ADIでIoT戦略のディレクターを務めるJason Lynch氏は、さまざまなセンサーからのアナログデータをデジタル化し、それらのデータを処理するというIoTの世界において、「ADIは中心的な役割を果たせると確信している」と述べる。「過去50年にわたり、実世界とデジタル世界の“橋渡し”を行う技術を手掛けてきたからだ」(同氏)

 ADIが特に力を入れるのが、デバイス側で処理を行い、必要なデータだけをクラウドなどにアップするエッジ処理だ。Lynch氏は「エッジ処理能力を高めるための技術に投資している。大量のデータをA-D変換すると消費電力が増加してしまうが、これはセンサーなどのエッジデバイスでは許されない。ADIは年間5億米ドル以上を研究開発に投資しているが、その大半を超低消費電力デバイスの開発や、エネルギーハーベスト(環境発電)技術の開発に費やしている」と述べた。

エコシステムを拡大

 もう1つ、ADIが重視しているのがエコシステムの拡大だ。ADIは、センシング技術やセキュリティ技術の分野で積極的に買収や提携を進めている。例えば2016年3月には、画像処理ソフトウェアを手掛けるスイスのSNAP Sensorを買収した。カメラの課題の1つとして、太陽光が強い場所など、高いダイナミックレンジが必要とされる場所での撮影に弱いことが挙げられる。SNAP Sensorは、明暗差が大きい場所で撮影された画像を補正するソフトウェアの開発を手掛けている。Lynch氏は、「ADIのセンシング技術および信号処理技術と、SNAP Sensorの画像処理技術を組み合わせることで、画像センシング向けのIoTプラットフォームを強化できることになる」と述べる。

SNAP Sensorのソフトウェアによって、明暗差が大きな場所で撮影された映像でも、人がいることがはっきり分かる(クリックで拡大) 出典:ADI

 Lynch氏が「とても期待している」と語るのが、材料センシングだ。この分野でADIは、イスラエルのConsumer Physicsと提携している。Consumer Physicsは、材料の組成を分析するための光分光器「SCiO(サイオ)」を開発中だ。近赤外線のレーザーを物質に照射すると、その反射光のスペクトラムが得られる。このスペクトラムを、あらかじめデータベースに登録してある物質固有のスペクトラムと照らし合わせることで、何の物質なのか判定できるというもの*)。Lynch氏によれば、ADIの光センサーやアナログフロントエンドを搭載することで、SCiOを小型化できたという。

*)スペクトラムがデータベースに登録されていなければ、判定はできないことになる。

 WORLD OF IOTでは、SCiOのプロトタイプを使ったデモが披露された。デモでは、チーズのカロリーと脂質、ミニトマトの糖度をSCiOで測定していた。Lynch氏は「究極的には、スマートフォンに搭載できるくらいSCiOを小型化するために貢献したい」と語った。

「SCiO」のプロトタイプ(左)と、チーズの組成を計測したところ。専用アプリを使ってカロリーと脂質を表示している。数値は、チーズのパッケージに表示されているものとほぼ同じだった(クリックで拡大)
ミニトマトの糖度をSCiOで計測しているところ(左)と、その測定結果。現在は、計測器をトマトに差し込んで糖度を測定している。SCiOを使うことで非破壊検査が可能になる(クリックで拡大)
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