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» 2016年12月22日 11時30分 公開

“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日(8):改革は“新しい形のトップダウン”であるべきだ (3/5)

[世古雅人,EE Times Japan]

新しいカタチの“トップダウン”

画像はイメージです

 杉谷は、この改革プロジェクトは“ボトムアップ”ではなく“トップダウン”でなければ成功しないと言い切った。

末田:「そういうもんなんですか? 同期の須藤が社長と直談判した結果、今この場があるので、僕は現場からのボトムアップの活動だと思っていましたけど」

佐伯:「いやいや、そうとも限らんよ。杉谷さんが言わんとしていることを最後まで聞いてみよう。われわれが思い描いているトップダウンとは違う意味合いで言っていると思う」

杉谷:「皆さんがボトムアップ的な活動と聞くと、職場単位で行う小集団活動などをイメージすることでしょう。もちろん、本プロジェクトの発端は須藤さんの行動がキッカケで、そこだけ見れば、アプローチはボトムアップです。ボトムアップの方が現場社員からの支持や理解が得られやすいと思うこともあるでしょう。しかし、ここで皆さんに少し考えてもらいたいのですが、希望退職を募る前の社内はどうでした? 社員は自発的で、積極的に何かを変えていくような動きはありましたか? 須藤さんからは、『現場の本音が出てこない、傍観者が多い、それにもかかわらず、今回の1件で一斉に経営批判をするようになった』と聞いています。

 こういう湘エレの企業体質や社風を見ている限り、果たして現場からのボトムアップ活動が生まれ、きちんと機能するでしょうか。さらに、ボトムアップという言葉の意味を“現場発の活動”と捉えているかもしれませんが、“現場だけの活動”に終わる公算も多いのです。最初に話したように、現場だけで自己完結してしまう“カイゼン”など、その典型例です。

 今回の場合、それでは話にならないでしょう。心底、何とかしたいという思いが須藤さんを突き動かし、こうして味方も集まった。そうではないですか? そして忘れていけないのが、日比野社長の存在です。次の株主総会で退任するかも、といった進退は、今は考える必要はありません。大事なのは、トップがコミットメントをした現場発のプロジェクトであるということです。決して、トップが現場の意見を聞かずに強引に推し進めるトップダウンではない、ということなのです。この違いをしっかりと認識してください。

 今まさに皆さんがやろうとしていること、そして日比野社長が期待していることは“新しいカタチのトップダウン改革”なのです。先ほど、このプロジェクトを経営刷新計画の1つに組み込んだ方が良いと話しましたが、それは、そうしなければ、『経営刷新計画はトップがすること』と 『本プロジェクトは現場がすること』と完全に二分化してしまうからです。もうお分かりですよね……」

須藤:「確かにそうですね。あの時、僕は居ても立っても居られなくなって、日比野社長の出社を待ち構えて直談判しましたけど、結果として、日比野さんがウンと言ってくれたから、このプロジェクトも成り立っているんだなとあらためて思います」

若菜:「トップが現場発の改革プロジェクトにコミットしたってことはすごく重要なんですよ。『経営トップの手先となってプロジェクトメンバーが動いている』と他の社員から思われたら、誰も協力してくれなくなります。アメとムチをうまく取り入れるんです。現場からすれば、皆さんは現場社員の目線も持っている。ここがアメの部分になります。一方で、改革プロジェクトにおいては、経営トップが認めたオフィシャルな立場で、少なからず半強制力もあるわけです。これがムチの部分ですね。このように、アメとムチの両方をうまく取り入れることが、先ほど杉谷が話した“新しいカタチのトップダウン”という意味です」

神崎:「若菜さん、すごーい! 私にもよく分かった」

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