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売上高3000億円超の世界へ「野武士を組織化する」太陽誘電 社長 登坂正一氏インタビュー(3/5 ページ)

» 2017年01月16日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

基本ビジネスの開発は「愚直に」

EETJ 開発面でスタイルを変える必要性は、ありますか。

登坂氏 開発については、大きく変える必要性はない。開発は、常にロードマップを定めて、要素技術のレベルを愚直に高めて、それら要素技術を組み合わせるだけ。必要な要素技術を見極めさえできれば、効率は維持できる。

EETJ 開発テーマ、開発の方向性をお聞かせください。

登坂氏 コンデンサー、インダクター、フィルターの3つの基本ビジネスは、材料に特化し、愚直にやっていく開発スタイルを貫く。

コンデンサー事業の方向性 (クリックで拡大) 出典:太陽誘電

 コンデンサーであれば、サイズを極限まで小さくする。容量も1000μFへと一途に大容量化する、という単純なことだ。

 自動車市場に向けては、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)といった次世代パワーデバイスの時代をにらみ、耐圧の高くて大容量な製品を開発し、積層セラミックでアルミ電解、フィルムコンデンサーを置き換えるという長年の夢を達成してみたいと思っている。

ハイブリッドを強みに、積層誘電体も

EETJ 通信用フィルターの開発方針を教えてください。

通信用フィルター事業の方向性 (クリックで拡大) 出典:太陽誘電

登坂氏 フィルターは、SAW(弾性表面波)フィルター、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)フィルターの双方を手掛けており、5G(第5世代移動通信)に向けて、全ての領域をカバーできるように取りそろえを増やしていく。

 今後、普及が見込まれる積層誘電体フィルターについても、積層は得意であり、小型化を進めていく。

 強みとしては、SAWとFBARのハイブリッド化ができるため、コスト、特性などでの優位性は高い。いずれは、SAWとFBARとともに、誘電体フィルターを入れていきたい。またパッケージが堅ろうという特長もある。自動車のテレマティックスなどの用途などで高いシェアをとっており、さらなるパッケージの小型化も進める。

 フィルターの生産性はまだまだ高くはない。やるべきことは多いが、成長の余地も大きいと考えている。

EETJ 通信用デバイスは、フィルターやパワーアンプなどを自社で手掛け、モジュールとして提供する垂直統合型のビジネスモデルも増えています。

登坂氏 モジュールを組み立てて提供するという選択肢もあるが、購入部材は多く、売り上げ規模こそ上がるが、収益性は悪くなる。われわれは、あくまで単品部品でいく。モジュール化が進んでも、モジュールメーカーに、フィルター単品を販売していく。

 ただ、単品でビジネスを行うためには、特性が良いというのことが前提になる。モジュールとして特性を調整できない分だけ、愚直にフィルター単品の特性を上げて勝負していく。

記録メディア工場だった福島工場を活用

EETJ インダクターの開発方針をお聞かせください。

インダクター事業の方向性 (クリックで拡大) 出典:太陽誘電

登坂氏 積層系インダクターとしてフェライトとともにメタルを手掛けている。特にメタルの積層タイプは当社だけの技術。極小でパワーが出せる点は、他にない強みを構築できている。

 一方で、弱いのが、車載用途で使われる大きな巻き線タイプのインダクターだ。今後、巻き線タイプに投資し、強化していく。弱いといっても、欧州の電装品メーカーとの付き合いは長く、車載向けの巻き線インダクターは早い段階から展開し、着実に実績を積んできた。

 太陽誘電は、小型を追う方が得意で、大きなものを作るのは苦手だ。ただ2015年に事業撤退した記録メディアを製造していた福島工場は、大きなものを作ってきた工場で車載電装向けの大きな製品の製造拠点へと転換している。まだまだ拡大の余地はある。車載向けの高信頼が求められる製品は日本で作っていく。

資本提携するエルナーとの取り組み

EETJ 2014年にはエルナーと資本業務提携を結び、車載向けを含んだキャパシターの製造を行っています。

登坂氏 提携内容は、われわれが持っている電気二重層、リチウムイオンキャパシターの電極材料をエルナーに供給し、エルナーが電気二重層、リチウムイオンキャパシターとして仕上げ、われわれが販売するというもの。少しずつ売り上げが上がってきている状況だ。

 リチウムイオンキャパシターは、車載向け、特にドライブレコーダー向けで需要が拡大している。その他にも、自動車のe-call(緊急通報)システムや水道用などのスマートメーターでのビジネスが立ち上がっていく見込みだ。

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