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2020年、空港はテクノロジーでどう変わるのかパナソニックの展示会(1/2 ページ)

パナソニックは、東京五輪が開催される2020年とその先の社会に向けて開発する独自技術やソリューションを展示するプライベート展示会「Wonder Japan 2020」を開催した。

» 2017年02月14日 11時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

パナソニックのプライベート展示会

 パナソニックは2017年2月13日、顧客向けプライベート展示会「Wonder Japan 2020」の事前内覧会を報道機関向けに開催した。同展示会は、東京五輪が開催される2020年とその先の社会に向けて開発する独自技術やソリューションを展示している。

 2015年はおもてなしソリューション、2016年はパートナーと協業した取り組みをテーマに展示が行われた。今回は「Beyond 2020 The Legacy―あすに繋(つな)ぐ あたらしい日本の姿―」をテーマに、都市、交通、スポーツの3分野を中心に紹介した。本記事では、パナソニックが提案する“未来の空港”を、交通分野の展示から紹介する。

パーソナル・モビリティ

画像はイメージです

 パナソニックの東京オリンピック・パラリンピック推進本部で副本部長を務める北尾一朗氏は「2016年の訪日外国人は2400万人を超えており、日本の表玄関となる“空港のアクセシビリティー(体験)”がますます重要になる」と語る。エレベーターの設置や段差の解消など、ハード面でのバリアフリー化は国内の空港でも進んでいるが、ソフト面での“情報を伝える視点”が不足しているとパナソニックは考えた。

 海外では「PRM:Passengers with Reduced Mobility」と呼ぶ、ケガ人や高齢者、障がい者など移動に支障がある旅客向けのモビリティー・サービスの利用者が増えているという。北尾氏によると、イギリス・ロンドンのヒースロー空港では1日に2000人、フランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港では1日1100人ものPRM利用者がいるようだ。国内でも、PRMサービス普及がアクセシビリティー向上につながると北尾氏は指摘する。

 パナソニックは、GPS(全地球測位システム)の信号が届かない屋内でも目的地までのバリアフリー経路を案内する「バリアフリーナビ」や、衝突防止センサーを搭載した電動車いす「WHILL」を用いた実証実験を羽田空港で行ってきた*)。今回は、旅客を目的地まで届けるモビリティー・サービスを展示した。最初に、デモを動画で紹介する。

*)関連記事:2020年に向け開発が進む先端技術、待ちきれない

電動車いすとカートロボを用いた旅客を目的地まで届けるモビリティー・サービス。
カートロボには、移動ロボット向けレーダーや独自の測定システムを搭載するため、前方の電動車いすにピタリと付いていく。デモはショッピングカート型だが、空港用の開発も検討中という (クリックで拡大)

 このモビリティー・サービスは、スマートフォンの専用アプリを用いて行き先を指定すると、電動車いすとカートロボが目的地まで運んでくれる。荷物をカートロボに乗せて、電動車いすに乗るだけで済むのだ。電動車いすは、屋内でも現在地が分かるセンサーと、障害物を検知するセンサーを搭載するため、人混みでも安全に走行できる。

 カートロボには、移動ロボットなどに採用されている北陽電機のレーザーを採用。説明員によると、あらかじめ内蔵した地図情報とレーザーから得られる情報を照らし合わせ、現在地を把握している。2018〜2019年頃に空港での実証実験を目指すとした。

「WiGig」は実証第2弾を開催へ

 展示では、次世代無線通信規格として期待されている「WiGig」のデモも紹介していた。WiGigとは、IEEE 802.11ad規格をベースとした60GHz帯を用いる無線LAN規格の1つ。最大7Gビット/秒(bps)と高速なデータ転送が可能なのが特長だ。

 2.4GHz帯や5GHz帯のWi-Fiと比較して、広い帯域が利用可能となり、高速な無線伝送を可能にする一方、減衰しやすい上に、直進性も強く、通信エリアが狭いという課題がある。パナソニックは、電波を特定の方向に集中的に照射する「ビームフォーミング」を適用し、この課題を克服した。環境により異なるが、通信距離は10m前後という。

WiGigに対応したタブレット端末で、2733Mバイトの動画コンテンツをダウンロードしている様子。映像背景と重なり見ずらいが、通信速度は1800Mビット/秒前後と非常に高速で、数秒でダウンロードが完了している。

 パナソニックは、2016年2月に成田国際空港でWiGigの実証実験を行ったが*)、2017年2月16〜24日に成田空港空港 第1ターミナル出国審査後エリア内のラウンジで、実証実験の第2弾を行うことも発表した。今回は、KADOKAWAと共同で実施することで、WiGigでダウンロードできるアニメや雑誌などのコンテンツ数を拡充している。WiGig対応のタブレット端末を無料で貸し出し、そのままラウンジで楽しむことが可能だ。

*)関連記事:2時間映画も10秒で――WiGigを体験してきた

 このように空港での利用用途として、搭乗前の待ち時間に機内で観賞するための映画や、旅先の観光ガイドや地図のダウンロードが検討されている。デモでは、現行のWi-Fiの通信速度が100Mbps前後だったのに対して、WiGigでは1800Mbps前後なのを確認できた。2017年からWiGigに対応したスマートフォンが登場予定であり、担当者は「WiGig対応製品のラインアップが増えると、Wi-Fiのように普及する可能性がある」と語る。

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