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エレクトロニクス産業を動かす“3大潮流”IHSアナリスト「未来展望」(1)(1/2 ページ)

変化の激しいエレクトロニクス産業の未来をIHS Markit Technologyのアナリストが予測する。連載第1回は、これからのエレクトロニクス産業を動かしていくであろう“3大潮流”を解説する。

» 2017年04月07日 11時30分 公開

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 目覚ましい技術革新、相次ぐ合従連衡――。エレクトロニクス産業は日々、その姿を変えている。競争軸も常に動き続け、栄華を極めたエレクトロニクス企業も、トレンドを見誤れば、わずかな時間で衰退していく。

 変化の激しいエレクトロニクス産業で、生き抜く、勝ち抜くには、現在をしっかりと見定めつつ、将来のトレンドをいち早く把握していかなければならない。そこで、日々、エレクトロニクス産業を分析し続ける調査会社のIHS Markit Technologyのアナリストが、エレクトロニクス産業で起こりつつある変化を分析し、そこから見えてくる未来を連載で紹介していく。

 連載第1回となる今回は総論として、IHS Markit Technology 日本調査部ディレクターを務める南川明氏が、これからのエレクトロニクス産業を動かしていくであろう“3大潮流”を解説する。

2017年のエレクトロニクス産業展望

 2017年以降のエレクトロニクス産業では、以下のような3つの大きな潮流が起こると予想している。

1.IoTのさらなる成長

2.AIチップの開発が加速

3.新メモリ時代の到来

 以下に、この3大潮流のそれぞれについて説明していく。

1.IoTのさらなる成長

 IoT(モノのインターネット)を導入する最大の要因は人口増加、高齢化、都市化の3大メガトレンドが引き起すさまざまな問題を解決するために各国が政策を立案し規制や優遇税制を導入しながら発展する。

写真はイメージです

 これまでエレクトロニクス市場をけん引してきたPC、スマホ、デジタル家電はわれわれの生活が便利になり、仕事の生産性アップが成長の要因であった。これまでのエレクトロニクス機器は単独で使われることが多く、エネルギーを消費することで仕事の効率を高め生活を便利にすることが役割だった。M2M(Machine to Machine)やIoTは既存のエレクトロニクス機器がつながることで新たなサービスを提供したり、効率的な社会を提供したり、エネルギー削減を目的にしている。つまり個人や企業の利益というより、迫りつつあるエネルギー危機を乗り越えなければならないことが背景にある。それも一刻も早くIoTを立ち上げ、エネルギー危機に対処しなければならないため、主要国は規制を導入することでIoT市場を創出しようとしている。

2.AIチップの開発が加速

 現在、世界中で使われているコンピュータは、ほぼノイマン型と呼ばれるアーキテクチャで稼働している。この構造では、マイクロプロセッサとメモリが別々に存在していて、それぞれがデータをやりとりするためのバスを介し、情報を処理する仕組みになっている。このバスが伝送できるデータ量には限界があるため、飽和状態になれば性能が抑えられてしまうために性能向上に歯止めがかっていた。また、大量のデータを高速で処理すればするほど、より多くの電力を消費するようになっている。現在、クラウドサーバなどの消費電力が膨大になってしまうことが大きな課題になっている。現在のサーバを使って人間の脳と同じ処理ができるようなコンピュータシステムを構築すると、その消費電力は原子力発電所1基分に相当するといわれている。2010年に世界の電力需要の約3%をデータセンターが消費していたが、2020年には5%、2030年には8%を占めるようになると試算される。

図1:世界の電力需給

 最新のノイマン型プロセッサは5GHzという高い周波数で動作する製品があるが、人間の脳は10Hz程度で動いているらしい。脳がこれほど低い動作周波数でも、高度な処理を実行できている秘密は、極めて並列度の高い処理ができる構造をもっていることにあるようだ。これに対し、現在のマイクロプロセッサは、チップを構成する1つの素子からアクセスできる素子の数は、最大100本程度である。

 つまり、ノイマン型アーキテクチャの限界から低消費電力が可能な脳を模倣した非ノイマン型チップである人工頭脳チップの開発が加速している理由だ。これまでのIntelやNVIDIA、Xilinxなどとは違うデバイスメーカーが出てくる可能性がある。IBMはすでにTrueNorth(トゥルーノース)を出しているが、多くの大学や米メーカーがAIチップの研究開発を行っている。まだ、人工知能チップの開発競争は始まったばかりだろう。

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