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パワーエレクトロニクス最前線 特集

Infineon、フルSiCモジュールを2018年に量産へPCIM Europe 2017(2/2 ページ)

» 2017年05月18日 13時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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「GaNは後発でも、市場投入のタイミングは逸していない」

 Infineonが注力する次世代パワー半導体はSiCだけではない。GaNの製品ラインアップも強化している。2015年1月にIR(International Rectifier)を買収したことでGaNデバイスのポートフォリオを手に入れ、2015年3月には、GaNパワーデバイスの開発でパナソニックと協業することを発表した。

 PCIM 2017では、GaNパワーデバイス群のブランド「CoolGaN」として、耐圧600Vのノーマリーオフ型GaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)を3種類発表した。オン抵抗は70mΩと190mΩで、出力が3kWまでのデータセンター用サーバやテレコムの用途に向ける。

「CoolGaN」として発表された3製品。今回発表したCoolGaNでは、Infineon独自の品質テスト方法を確立し、それを適用して品質を示すという(クリックで拡大) 出典:Infineon Technologies

 PCIM 2017では、600VのCoolGaNを用いた、2.5kWのトーテムポール型PFC(力率改善)のデモボードを展示した。70mΩの「DSO BSC」を2個と、33mΩのSi-MOSFET(「CoolMOS」ブランドとして展開)を2個用いたもので、99%以上の効率を実現しているという。さらに、同じく600V品を用いたLLC式DC-DCコンバーターのデモボードも展示した。160W/inch3の電力密度を実現している。

Infineon TechnologiesのTim McDonald氏。

 InfineonのGaN Marketing & Applicationのシニアディレクターを務めるTim McDonald氏は、600V品のラインアップを用意したことについて「GaNパワーデバイスにおいて、より高い耐圧へのニーズがあるのは確かだが、まずは(現在のGaNパワーデバイスでは主流の耐圧である)600Vから始める。1200V以上は、SiCパワーデバイスの特性が生きる領域だと考えている。600Vから1200Vの間は、用途によってGaNとSiCが混在するのではないか」と述べた。

 今回の600V品はデータセンター用サーバとテレコム向けだが、今後は、「AC-DCアダプターやモバイル向けアダプターを狙う可能性もある」(McDonald氏)

トーテムポール型PFCのデモボード(左)と、LLC式DC-DCコンバーターのデモボード(クリックで拡大)

 富士経済によれば、2016年のGaNパワーデバイス市場は14億円で、SiCパワーデバイスの205億円に比べると10分の1以下である。McDonald氏は「GaNパワーデバイスの市場はまだ小さいが、成長が加速していると感じる。Infineonは後発だが、GaNパワーデバイスを本格的に市場に投入するタイミングは逃していない。むしろ、今が絶好のチャンスだと考えている」と語った。

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