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» 2017年06月30日 08時00分 公開

Over the AI ―― AIの向こう側に(12):力任せの人工知能 〜 パソコンの中に作る、私だけの「ワンダーランド」 (9/9)

[江端智一,EE Times Japan]
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今回のまとめ

 それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。

【1】冒頭で、現在の日本の政治政党のほとんどが、マニフェストにきっちりした数字を出していないし、出しているとしてもその算出根拠を示していないことを述べました。

 その上で、各政党は、各政党の数値目標と、その数値目標を算出した、シミュレーションプログラムのソースコードを開示して、その政策の根拠を明らかにすべきである、と提案しました。

【2】江端は2017年度から町内会の役員となり、その町内会の完全な「アナログシステム」が、シニアの役員にとって合理的に機能していることを説明し、「デジタルシステム」が必ずしも正解ではない旨を説明しました。

 しかし、その一方で、江端のシミュレーションの結果から、今後20年間で、デジタル人口が劇的に増加し、「アナログシステム」が、逆に地域コミュニティーの発展の足枷になりかねないと、警鐘を発しました。

【3】私たちの世界(の現象)を理解する方法として、(1)「仮説」(2)「論理」(3)「シミュレーション」の3つがあることを示し、それぞれのメリットとデメリットを列挙しました。そして、(1)「仮説」の効率の悪さ、(2)「論理」の定立の難しさを示し、第3の方法としての「シミュレーション」による世界の理解の方法を説明しました。

【4】物理法則で支配されている「モノ」について、シミュレーションできないものはないことと、物理法則の支配を受けず、行動原理が非合理である「ヒト」についても、シミュレーションの対象とすることができることを、経済学における人間行動の把握の仕方をサンプルとして説明を行いました。

【5】さらに「シミュレーション」が、複雑で理解不能な「論理」の内容を、力ずくで理解させる方法としても、有効に機能している事例を、「モンティホール問題」などの例で説明しました。加えて、江端がこれまでシミュレーションという「力技」を使って、人口、電力、ダイエット、人身事故などの社会現象の理解を行ってきたことを紹介しました。

【6】シミュレーションを行う上で、オブジェクト指向プログラムという道具が、大変役に立つことと同時に、そのプログラミングの概念が多くの人にとって理解しにくい理由を明らかにしました。さらに、オブジェクト指向プログラミングの作成プロセスや、パソコン内部での動き方についても概説しました。

以上です。

神サマは多分、いない

 私、EE Times Japanの連載のネタのために、1カ月に1つか2つの簡単なシミュレーションプログラムを作っているのですが、そのようなシミュレーションを作り続けているうちに、

 ―― 神サマは、多分いない

と思えるようになってきました(それ以前に、私はイベント(クリスマス、正月、お盆)毎に、神サマをチェンジ(交換)する典型的な日本人ですが)。

 だって、私のシミュレーションプログラムで、1億2000万の人間のオブジェクトを100年分面倒みるだけでも、ものすごく大変なのに、全世界73億の人間オブジェクトを管理するなんてこと、神サマどんなにすごい神サマでも絶対に無理だと思うのです。

 私が神サマだったら ―― 全世界の人類を均一に幸せにする初期パラメータを自動設定して、そのまま放置する ――

 これで、私たち人類は誰もが幸せに生きることができ、神サマは世界の運用管理から解放されてラクをすることができます。そこには、完全なWin-Winの関係が成立するはずです。

 神サマがいるかいないかは、少なくとも私たちが生きている間は知りようがありません。なぜなら、神サマは、私たちが死んでしまった後に登場する「役立たず」だからです。

 ともあれ、私のこれまでのシミュレーションによる世界の理解では、『神サマはいない』か、あるいは『いたとしても役立たず』と解釈するのが、最も合理的なのです。

⇒「Over the AI ――AIの向こう側に」⇒連載バックナンバー



Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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