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パリから技術革新を、世界の新興企業が集う場所インキュベーション施設探訪(1)(1/2 ページ)

2017年7月、パリに世界最大級のインキュベーション施設「Station F」が誕生した。1000社に上る新興企業が入居できる施設で、既に500社が入居済みだという。今回から複数回にわたり、設立されたばかりのStation Fをレポートする。

» 2017年08月03日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

パリに誕生した巨大なインキュベーション施設

 現在、中国・深センからニューヨーク、シリコンバレーに至るまで、技術インキュベーターが次々と出現し、夢見る起業家たちに手頃な価格のオフィススペースを提供することにより、新興企業の設立と成長をサポートしている。

 このような新興企業キャンパスの中でも、2017年7月初めにパリに設立された世界最大級の「Station F」は、その規模や快適性、活気などの他、イノベーションとの両立が可能なエコシステムが組み込まれているといった点から、最も典型的な例として挙げられるだろう。

 Station Fは、フランスの億万長者であるXavier Niel氏の考案により、廃駅を改築して設立された施設で、1000社の新興企業を入居させることが可能だという。もともとあったコンクリート構造体を維持しながら、約3万4000m2の土地にある建物を再構築することにより、広々としたモダンかつオープンなオフィススペースを提供している。

「Station F」の外観

 このStation Fがユニークなのは、フランスだけでなくさまざまな国の起業家たちが、共に入居するという点だ。異なるバックグラウンドを持つ人々が、独自のアイデアを持ち寄り、多様な市場分野をターゲットとする幅広い技術やビジネス分野に注力する新興企業として入居するのである。

 Station Fのデスクスペースの賃貸料は、1カ月当たり195ユーロ(約2万5000円)で、1970年の米国カリフォルニア州サニーベールのガレージの賃貸料と同程度である。しかし起業家たちは、オフィススペースの賃貸料の安さではなく、Station Fの高い評判に引かれて入居してくるという。入居の判断は、選択的に行われる。まだ初期の段階にある新興企業が、誰もが望むようなフルタイムのデスクスペースを確保するためには、申し込み後に、技術に精通したStation F選定委員会による入念な審査を受けなければならない。

 Station Fは、始動してからまだ1カ月もたっていないが、既に500社の新興企業が入居している。2017年末までには、さらに500社の応募企業が空きスペースに入る予定だ。

少数精鋭の200社

 新興企業1000社のうち200社は、Station F内部の「Founders Program(創設者プログラム)」によって選定されたという。この他の企業については、MicrosoftやFacebook、Zendesk、Ubisoft、ThalesなどStation Fのパートナー企業が設立した「新興企業プログラム」によって選ばれている。これらのパートナー企業はそれぞれ、Station Fにおいて独自のアクセラレータープログラムを実行する予定だという。

 EE Timesは2017年7月、Station Fを訪れ、施設内を見学してから、数人の起業家たちに、独自の開発技術や事業内容などの他、Station Fへの入居を決断した理由についても話を聞いた。

 Station FのFounders Programに取り組んでいる起業家たちは、応募してきた新興企業2300社の中から選ばれた、少数精鋭の200社であることを自覚している。

 最終的に、どのようにしてそれぞれのスペースを確保することができたのだろうか。

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