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誰でも起業を、“フランスのジョブズ”の哲学インキュベーション施設探訪(2)(2/3 ページ)

» 2017年08月07日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

自国の西海岸ではなく異国を選んだ米新興企業

 米国ウィスコンシン州マディソン市に拠点を置く新興企業Torq Labsは、パリでStation Fのデスクを獲得したことにより、文字通りかけがえのないチャンスを得たことになる。

 Torq Labsは、レギンスに4つのセンサーユニットを組み込むことによって、「動作マッピング技術」の開発に取り組んでいる企業だ。これらのセンサーで、腰と膝、足首をモニタリングすることにより、ケガの予防方法やリハビリ手法などを改善していきたい考えだという。

 同社はStation Fに応募し、スペースを勝ち取ることに成功した。

 設計者で生化学エンジニアであるTorq LabsのCatherine Finedore氏は、EE Timesに対し、Torq Labsがフランスのパリでファッションデザイナーや生地の開発業者に接触する機会を得たと語った。Torq Labsの開発者らは、「Founders Program」を通じて、本来ならば会えなかったであろう人物や将来のパートナーに会うことができた。Finedore氏は、「Designed in Paris(パリで設計された)」という価値が、米国ウィスコンシン州マディソンを拠点とする新興企業の製品の評判を高めることを望んでいるという。

 Torq Labsの共同設立者兼COO(最高執行責任者)であるJustin Swenson氏は、フランスの就業ビザを取得済みだ。同氏は、フランス政府が海外の技術人材を育成するために制定した「French Tech Visa」という特別なプログラムを利用した。Finedore氏と、Torq Labsの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)であるJulian Holtzman氏も、同プログラムを利用して就業ビザを申請中だという。

左から、Torq LabsのJustin Swenson氏、Julian Holtzman氏、Catherine Finedore氏。同社が開発したウェアラブル機器を掲げている

 Holtzman氏は、米国中西部は新興企業にとって活気のある環境とはいえない点に言及した上で、Torq Labsの拠点をニューヨークかサンフランシスコに移す案も視野に入れていたことを明らかにした。だが、Swenson氏によると、いずれの都市も設立から間もない新興企業にとっては割高な土地だったそうだ。そこで、同社はStation Fに移転することを決断した。その方がコストをかなり抑えられる上に、より多くの機会を期待できるからだ。

ベンチャーキャピタル(VC)が近くにある強み

 Station Fには、初期から後期段階の投資を行うVCファンドであるDaphni、ヨーロッパと中国で投資を行うベンチャーキャピタル(VC)ファンドのVentech、自らを「世界で最もアクティブなベンチャー投資家」を呼ぶKima Venturesなどを含む、複数のベンチャーキャピタルが入所している。Niel氏は、Kima Venturesを立ち上げた設立者の1人である。

 つまり、Station Fでは、資金を手に入れるのが容易であるということだろうか?

 この問いかけに対し、Station Fの入居者であるSelf-MedのCOO、Jeremie Toledano氏は、必ずしもそうではない、と答えた。一方、同じく入居者のPrevision.ioのGerome Pistre氏は「アイデアのキャッチボールをする相手がいるのは便利だ。自分のデスクからわずか数百メートルのところにVCがあるので、VCに行き着くまでのプロセスはかなり簡略化された」と述べた。

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