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パワー市場をけん引する企業へと変化――車載、産業、通信で広範な製品群がそろうオン・セミコンダクター 上席副社長 David Somo氏

2016年9月にフェアチャイルド・セミコンダクターの買収を完了し、年間売上高が50億米ドルの半導体メーカーとなったオン・セミコンダクター。この買収により、同社はアナログ・パワー事業の比重が一気に高まった。コーポレートストラテジ&マーケティング担当上席副社長のDavid Somo氏は、パワー市場をけん引するメーカーへと変化したと強調する。

» 2017年08月22日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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フェアチャイルドの買収完了とともに組織も大幅に変更

――直近の業績について教えてください。

David Somo氏 2017年第2四半期の売上高はGAAPベースで13億3800万米ドルだった。前四半期比では約7%減となったが、当社は2017年1月1日から、製品を販売代理店に出荷した時点で売り上げの計上を開始する「セルイン」方式に移行している。この移行に伴う影響を除いた非GAAPベースの売上高では、前四半期比で約4%増となった。13億3800万米ドルである。また、前年同期比では約52%増となり、強い手応えを感じられる四半期となった。

 分野別の売上高の比率は、自動車が全体の31%、産業機器が26%、コミュニケーションが19%となっている。

――2016年9月にはフェアチャイルド・セミコンダクターの買収を完了し、年間売上高が50億米ドルの半導体メーカーとなりました。買収完了とともに、組織体制も大きく変えました。

Somo氏 買収後の調整は極めてスムーズに進んでいる。フェアチャイルドの製品群は当社にとって補完的であり、自動車、産業機器、コミュニケーションを注力分野とする当社の戦略にも合っていた。オン・セミコンダクターとフェアチャイルドは、顧客ベースでの重複がわずか30%しかなかった。現在、オン・セミコンダクターと旧フェアチャイルドの営業組織はすでに統合し、両社の製品を双方の顧客に販売している。社内的なシステム統合は2017年第4四半期に完了する予定だ。現時点で、両社の統合のスピードには満足している。

 ビジネスグループの組織は、新しく「パワー・ソリューションズ・グループ(PSG)」「アナログ・ソリューションズ・グループ(ASG)」「イメージ・センサー・グループ(ISG)」で再編した。組織の再編に伴う従業員の異動や配置は全て完了し、現在は財務や事業計画で統合後の調整を行っているところだ。こちらも2017年第4四半期には完了する予定になっている。

――新しい3つのビジネスグループや、組織再編の利点についてもう少し詳しく教えてください。

Somo氏 PSGでは、パワー半導体ディスクリート、パワーモジュールに加え、パワースイッチやシグナル・コンディショニングIC、保護素子などを扱う。売上高の割合で見るとPSGが最も大きく、2017年第1四半期の全売上げの50%と半分を占めている。ASGではパワー変換、コネクティビティ、組込み制御向けの、アナログ、ミックスド・シグナル、SoCを扱う。ISGは、CMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサー、イメージシグナルプロセッサを手掛ける。2017年第1四半期における売上高の割合は、ASGが36%、ISGが14%だ。

オン・セミコンダクターの新しいビジネスグループは、3つに再編している

 新しい体制に変更したことで、これまで分散していた開発リソースを最適なところに集約できるようになった。例えば、三洋半導体の事業を継承した旧システム・ソリューションズ・グループ(SSG)のMOSFETとIGBTの開発部隊は現在、PSGになっている。市場や用途別ではなく、製品カテゴリーに合わせて組織を変更したおかげで、製品開発において無駄な重複がなくなっている。これによって、より多くの種類の製品を並行して開発できるようになった。

パワー市場をけん引する企業へ

――フェアチャイルドの買収も含め、2016年9月以降の1年間で、オン・セミコンダクターはどのように変わりましたか。

Somo氏 最も大きく変わったのは、オン・セミコンダクターが、よりパワーデバイスに重点を置いた企業へと変化していることだ。10年間というスパンで見た方が、その変化は分かりやすい。2006年は、アナログ/パワー/センサー事業の売り上げが全体に占める割合は43%だった。2016年第4四半期には、その割合が77%にもなっている。これは、パワー分野をけん引してきたフェアチャイルドの買収が大きい。さらに、フェアチャイルド買収後のオン・セミコンダクターはパワー半導体市場の売上高で、Infineon Technologiesに次ぐ第2位のメーカーとなった。

――パワー事業がどのように強化されたのかを具体的にお聞かせください。

Somo氏 パワーデバイスでは、オン・セミコンダクターがこれまで提供してきた低電圧から中電圧の製品に加え、フェアチャイルドが強みを持っていた高電圧のラインアップが加わった。これにより、非常に広範囲にわたる製品群を当社の注力分野向けに提供できる体制が整った。当社は「New Powerhouse in Power(パワー市場での新しい大手メーカー)」であると考えている。例えば産業市場におけるパワー変換では、変電所などの480Vから、PCに搭載するプロセッサやメモリ向けの5Vや1.2Vまでの製品ポートフォリオがそろっている。

パワー変換デバイスの製品ポートフォリオの一例

 自動車分野でも、製品群の充実ぶりが見て取れるだろう。OBC(オンボードチャージャー)、パワートレインやボディー向けのモーター、バッテリー管理、12V系および48V系システムに向けたMOSFETやIGBT、ドライバーICなど、自動車のサブシステムに必要な製品の幅がより広がった。

自動車のサブシステム向けの製品群が拡張した

 パワーだけでなく、コネクティビティ、センサーも併せて、これほどまでに幅広い製品群をそろえている半導体メーカーは他にないと自負している。顧客の間でも「オン・セミコンダクターは幅広い製品群を持っている」という認識が高まったように感じる。

――パワー事業の今後の戦略をお聞かせください。新しく狙う市場はありますか。

Somo氏 注力分野である「自動車」「産業」「コミュニケーション」に向けて、ディスクリートからモジュールまで広範な製品を提供すべく継続して投資を行う。SiCやGaNの次世代パワー半導体についても開発を進めていく。

 また、サーバ市場に、より焦点を当てていく。これまでのオン・セミコンダクターにはサーバ向け製品がなかったが、フェアチャイルドが約2年前から、サーバ向けのパワーステージデバイスを手掛けているので、この資産を使う。オン・セミコンダクターにとっては新たに注力する市場となる。

製品群の拡充が進む車載向けセンサー

――注力分野の1つである「自動車」に関係することですが、2017年3月にIBMのミリ波技術と、その関連資産を買収すると発表しました。

Somo氏 IBMでは、産業用や、防衛、宇宙向けにミリ波レーダー技術を開発していたので、当初は車載用というわけではなかった。同じ技術を車載にも使えるということだ。買収したレーダー技術開発部門はISGに組み込んでおり、現在、イメージセンサー開発部隊とともに、イメージセンサーとミリ波レーダーを活用したADAS(先進運転支援システム)向けセンサーフュージョン技術の開発に取り組んでいるところだ。より高い信頼性で自動車の周囲の環境情報を提供すべく、いかにイメージセンサーとミリ波レーダーを活用するかを検討している。例えば、イメージセンサーとミリ波レーダーをモジュール化するという方法も考えられる。

 2016年におけるISGの製品売上高約7億2000万米ドルのうち、約40%が自動車市場からの売り上げだ。残りのうち約40%が産業分野から、約20%がその他の分野からの売り上げとなっている。さらに、ADAS向けのイメージセンサー市場では、オン・セミコンダクターのシェアは70%に上る。リアビューカメラや車室内カメラ向けなども含めた車載センサー全体の市場でも、50%のシェアを持っている。

 ADASは自動車業界の大きなトレンドの1つだが、ここでもわれわれは広範な製品を提供できる。下の図に示す通り、自動車の周囲をセンシングするテクノロジーはISGが、電源やディスプレイ周辺、コネクティビティの部分は、PSGとASGが手掛ける製品でカバーできる。ADASに必要なソリューションを、メイン・プロセッサを除く完全な形で提供できるわけだ。ADASは、3つのビジネスグループがシナジーを発揮できることを示す、分かりやすい例の1つでもあるだろう。

――「プロセッサを除く」ということですが、オン・セミコンダクターとしては、いずれはそうしたプロセッサも含めた、ADAS向けのプラットフォームを構築する考えなのでしょうか。

Somo氏 それは少し違う。現状、ADAS向けプロセッサはNVIDIAやIntel、Mobileyeが強みを持っていて、当社がこの分野に参入することは考えていない。われわれのターゲットはあくまで、センシングをして、プロセッサにデータを送信する前の段階で、ある程度データを処理するところまでだ。

IoTや産業向けでも包括的なソリューションを提供

――他の2つの注力分野「産業」「コミュニケーション」に向けて開発した特徴的な製品や技術についても教えてください。

Somo氏 産業分野では、モジュラー構造の「IoT開発キット」を発表した。ARMのCPUコア「Cortex-M3」を搭載したSoC(System on Chip)や各種センサー、アクチュエータ、電源管理やバッテリー充電、コネクティビティを備えるハードウェアと、OSやAPI、アプリケーションなどのソフトウェアで構成されるキットだ。幅広い分野向けのIoT機器を短期間で開発できるようになる。当社は、このようにIoT機器開発向けプラットフォームの構築に取り組んでおり、「IoT開発キット」はその成果の1つだ。

 コミュニケーション分野では、USB Type-C向けの製品をはじめ、急速充電や無線インフラ向けの製品に力を入れていく。この分野でも、USB Type-C製品や電源管理ICに強みを持っていたフェアチャイルドの買収によって、当社は包括的なソリューションを提供できるようになった。一次側コントローラーICから充電コントローラー、高電圧保護スイッチ、バッテリー保護素子まで包括的な製品群がそろっている。われわれはこれを「Wall to Battery Solution(壁側から電池までを網羅する包括的な製品群)」と呼んでいる。

モバイル機器の充電関連の製品群

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提供:オン・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月21日

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