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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

日本は「移動するIoT」をどう考えるべきか? 〜 産業用ドローンへの取り組みJASA発IoT通信(3)(2/4 ページ)

» 2017年08月24日 11時30分 公開

過疎地域・高齢化に対応するドローンの活躍

 総務省の2017年度版「情報通信白書」の「ICT研究開発の推進」によると、わが国が超高齢化社会を迎え、労働力不足に直面する中で、過疎地も含めた高齢者の安心、安全な生活の実現や生産性の確保に向けて、自動走行車や自律型ロボット、ドローンなどの実現は、物流、観光、土木、福祉など多様な産業において新たなビジネスの創出の強力な武器となることが期待されている。

 JASAは自動走行車やドローン(ここでは無人航空機と言いたいところだが……)は「移動するIoT」と定義している。陸を走る自動走行車でも、空を飛び交うドローンでも、共通した技術は無線通信技術となる。無線通信技術として真っ先に思い浮かべるのは携帯電話通信網であるが、今でこそかなりのエリアをカバーしているが、「移動するIoT」が活躍する社会ではどうだろうか?

 筆者の経験談を挙げれば、金沢の林道をサイクリングしていると電波、GPSが不通になることは日常茶飯事だ。過疎地域である群馬県の実家では縁側に出ないと電波を受信しない。このような状況で活躍できる「移動するIoT」が電波ありきで語られるのは間違っている。少なくとも拠点となる基地局には電波ありきでもよいが、電波がない状況下でも活躍できる仕組みが「移動するIoT」を考える上で必須だ。

図3:マルチホップ中継制御による通信経路 出典:情報通信研究機構プレスリリース:http://www.nict.go.jp/press/2017/07/31-2.html

 電波の状況は飛行経路により刻々と変化していく。電波が途切れる場合を想定する他に、複数無線の組み合わせと使い分け、いわゆるマルチホップを考慮する必要がある。

 「移動するIoT」で新たなビジネスを創出できるのは、無線通信が途切れるといった異常事態を通常状態と考えて、いかに安心、安全を担保したシステムにできるかが鍵となる。

表:ドローン無線
分類 無線局免許 周波数帯 送信出力 利用形態 備考 無線従事者
資格
免許及び登録を要しない無線局 不要 73MHz帯など ※1) 操縦用 ラジコン用微弱無線局 不要
不要※2) 920MHz帯 20mW 操縦用 920MHz帯テレメータ用、
テレコントロール用特定小電力無線局
2.4GHz帯 10mW/MHz 操縦用
画像伝送用
データ伝送用
2.4GHz帯小電力データ通信システム
携帯局 1.2GHz帯 最大1W 画像伝送用 アナログ方式限定※4) 第三級陸上
特殊無線技士
以上の資格
携帯局
陸上移動局
※3) 169MHz帯 10mW バックアップ回線用 無人移動体
画像伝送システム
(2016年8月に制度整備)
2.4GHz帯 最大1W 操縦用
画像伝送用
データ伝送用
5.7GHz帯 最大1W 画像伝送用
データ伝送用
【注】国内でドローン等での使用が想定される主な無線通信システムは、以下の通りです。
※1)500mの距離において、電界強度が200μV/m以下のもの。
※2)技術基準適合証明等(技術基準適合証明および工事設計認証)を受けた適合表示無線設備であることが必要。
※3)運用に際しては、運用調整を行うこと。
※4)2.4GHz帯及び5.7GHz帯に無人移動体画像伝送システムが制度化されたことに伴い、1.2GHz帯からこれらの周波数帯への移行を推奨しています。
出典:総務省(http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/drone/index.htm

ホビー用ドローンで産業は成り立つのか?

 世界にはドローンを開発するメーカーが多く存在する中、ここ数年日本でもドローンメーカーやドローン関連サービスを提供する事業者が急増してきている。今やドローンという言葉を知らない人がいないほど、ドローンはメジャーな存在になった。一般的に広く認知された出来事として2015年4月22日に発生した首相官邸無人機落下事件がある。この事件には、日本国内で誰でもホビー用ドローンを購入できるようになったことが背景にある。

 日本におけるドローンの歴史は長く、代表的な製品としてヤマハ発動機製の農業用無人ヘリコプターが挙げられる。この農業用無人ヘリコプターは、日本でまだドローンという言葉が認知されていない時代から産業用途として活躍してきた。いわば日本の産業用ドローン界をけん引してきた存在であることは間違いない。

図4:産業用として活躍する農薬散布用ドローン 出典:StudioKOBA

 近年、広く活躍しているドローンは空撮用途のドローンである。今では空撮映像を見る機会も増え、身近な存在となった。しかし、空撮用途の多くはホビー用のドローンを使用しているのが現状であり、ドローンで空撮を行っている事業者は常に墜落のリスクを背負っているため、頭を悩ませている。現にGPSが測位できず制御を失い、墜落した事例や山中に飛んで行ってしまったという信じ難いトラブルが発生しており、ついには人身事故も発生した。今後もいつ大惨事が起こっても不思議ではない。この状況でドローン産業が発展していくことはあり得ない。

図5:経済産業省 空の産業革命に向けたロードマップ (クリックで拡大)

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