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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

Bluetoothを産業分野でも、メッシュの採用で民生機器以外に拡大狙う(1/2 ページ)

Bluetooth SIGは、東京都内で記者説明会を開催し、メッシュトポロジーを採用した「Bluetooth mesh」について説明した。Bluetooth meshは当初から産業用途を意識したもので、これまではBluetoothが使われてこなかった市場にもBluetoothが拡大すると語った。

» 2017年09月12日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

最初から産業分野をターゲットに

 Bluetooth Special Interest Group(以下、Bluetooth SIG)は2017年9月8日、東京都内で記者説明会を開催し、新しいトポロジーとしてメッシュネットワークを採用した「Bluetooth mesh」について説明した。Bluetooth meshは、Bluetooth SIGが同年7月18日(米国時間)に発表したもので、数千個に上るデバイス間接続が可能になる(関連記事:Bluetooth mesh、数千の端末で相互通信が可能に)。Bluetooth meshはBluetooth 4.0以降で動作する。相互運用性テストについては仕様策定と並行して行っていて、既に完了している。

 民生機器が主なターゲット市場だったこれまでのBluetoothに比べ、Bluetooth meshは明確に産業機器をターゲットとしている。「仕様策定の段階から、産業用途向けを念頭に置いていた」とKoldrup氏は語る。そのため、信頼性と拡張性、セキュリティの3つを特長としている。

 信頼性では、単一障害点を持たない自己回復ネットワークを実現している。拡張性は、冒頭で述べた通り数千個に上るデバイスを接続できる。理論的には、3万2000ノードまでサポート可能だ。セキュリティでは、Bluetooth meshの全てのメッセージを暗号化したり、meshネットワークができた後でもセキュリティキーを変更したり、ノードをネットワークから完全に切り離すことができたり、といったセキュリティ事項が適用されている。

Bluetooth meshの3つの特長

 Bluetooth meshの主なターゲット分野は、ビルディングオートメーション(BA)、無線センサーネットワーク、資産追跡だ。資産追跡は、高価な装置や設備が多い病院などでの活用を見込んでいる。装置や設備の使用状況や位置をBluetooth meshを使って追跡することで、利用効率を高めることができるとKoldrup氏は説明する。

Bluetooth meshの主なターゲット市場

 Bluetooth SIGでマーケティングバイスプレジデントを務めるKen Koldrup(ケン・コルドラップ)氏は、「新しい『Bluetooth mesh』によって、Bluetooth技術はこれまでとは全く異なる方法で使われるようになるだろう」と述べる。

 これまでのBluetoothは、1対1あるいは1対多数で通信するトポロジーを特長としてきた。1対1(ポイント・ツー・ポイント)では低消費電力の接続を実現するBluetooth Low Energy(BLE)の普及もあって堅調な成長が続いていて、ABI ResearchによればBluetoothコネクテッドデバイス市場は、2022年には1年当たりの出荷数が15億台に達する見込みだ。1対多数接続の主要なマーケットであるBluetoothビーコン市場も、2022年に1年当たりの出荷数が7億5000万台になるとみられている。

Bluetooth Low Energy(BLE)およびBluetoothビーコン市場の予測 出典:Bluetooth SIG(クリックで拡大)
Bluetooth SIGのKen Koldrup氏

 1対1、1対多数に比べ、メッシュネットワークは複雑なトポロジーだ。特に新しいトポロジーでもない。それでもBluetooth meshが開発されたのは、Bluetooth SIGのメンバー企業からのニーズが強かったからだとKoldrup氏は語る。「以前から、何社かのメンバー企業は、BAなどを実現できるメッシュネットワークを探していた。選択肢は幾つかあったが、拡張性やセキュリティといった面で、要件を満たすものがなかった。Bluetooth技術を使いこなしてきたメンバー企業は、Bluetoothでメッシュネットワークを構築できれば、自分たちの要件を満たすものが作れるのではないか、と提案し、そこからBluetooth meshが完成した」(Koldrup氏)

 同氏は、「Bluetooth SIGのメンバー企業は、接続技術の将来性について“先見の明”がある。(Bluetoothのバージョンアップのたびに)優れた機能を、メンバー企業の提案によって追加していく。Bluetooth技術は、このようにして育ってきた」と続けた。

 Koldrup氏は「Bluetooth meshは、これから続々登場するIoT(モノのインターネット)市場において、重要な役割を果たすと確信している」と語った。

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