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「EyeQ5とXavierの比較が不適切」 NVIDIAが反論Intelの主張に対し(2/3 ページ)

» 2017年12月08日 12時20分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

車載市場での“復活”を狙うIntel

 簡潔に言えば、XavierはEyeQ5よりはるかに強力なAIエンジンを搭載している。

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏も、McGregor氏の見解に同意している。同氏は、「プロセスノードの比較には意味がない。レベル4またはレベル5を達成するには、ニューラルネットワークエンジンのTOPSとCPUの計算性能が最も重要だ」と述べている。

 もしそうなら、なぜ両社は、SoCのみの性能をめぐって激しい戦いを繰り広げているのだろうか。

 それは、自動運転技術市場における競争がまだ初期段階にある中で、両社とも、「自社のソリューションの方が、競争相手よりも電力消費量が大きく、性能も劣っている」と見なされたくないからだ。

 McGregor氏は、「しかし、性能をめぐって互いを打ち負かそうとする争いがエスカレートしているということは、Intelが車載用チップ市場で必死に復活を狙っていることを示している」と指摘する。

 同氏の指摘は、Intelがかつて、Ford Motors(以下、Ford)にマイコンを供給する主要サプライヤーだったことを思い起こさせる。

 Intelの『8061』マイコンとその派生品はほぼ全て、1983〜1994年の間に製造されたFordのクルマに搭載された。しかし、Fordがその後、マイコンの調達先をIntelからMotorolaに変更したため、Intelは自動車市場から姿を消すことになった。そしてIntelは2005年、全ての車載向けマイコンチップの製造を中止することを発表したのだった。

 Intelは現在、Mobileyeを150億米ドルで買収したことにより、自動車市場で挽回できると期待しているようだ。

より近い条件下で比較するには

 NVIDIAは、「XavierとEyeQ5の電力効率を全く同じ条件で比較するには、いずれも7nmプロセス技術で製造するとの想定に基づき、24TOPSの処理性能を実現する場合にのみ可能である」と主張する。

 Shapiro氏は、「これらのパラメータ(7nmプロセス技術適用、24TOPSの処理性能)をベースとして計算すると、当社の既存のXavier製品では、24TOPSの場合の消費電力量は、DLA(Deep Learning Accelerator)+GPUだけで約12Wとなる。また、現行の16nmプロセス技術から7nmプロセス技術に移行することになれば、消費電力を約40%低減できるため、Xavierの消費電力は約7Wになると想定できる」と述べている。

 同氏は、「つまり、正確には、24TOPSの処理性能の場合の消費電力量は、EyeQ5が10W、Xavierは7Wということになる」と結論付けている。

 しかし、The Linley GroupのDemler氏は、このような主張に納得していない。

 同氏は、「この場合、SoC対SoCのスペックを比較しているのではなく、自動運転レベル4あるいはレベル5に対応する自動運転車に必要な、実際の性能について議論していることになる。Intel(Mobileye)は、24TOPSは十分な性能だと主張しているが、NVIDIAは、最大320TOPSを実現可能な『Pegasus』プラットフォームを構築している。問題は、『レベル4とレベル5に対応する自動運転車の実現に向けて深く関与できているのはどの企業なのか、そして、どの程度の性能が必要になるのか』という点だ。Intelが、自ら実現できると思っていても、誰もそのことを知らないのだ」と述べる。

 NVIDIAはもともと、Xavierチップを発表した当初、消費電力20Wで20TOPSの性能を実現するとうたっていた。しかし現在では、消費電力30Wで30TOPSを実現可能だと主張している。これと同じように、Intelが現在発表しているEyeQ5の仕様は、MobileyeがIntelに買収される以前に発表した時のものとは大きく異なる。

NVIDIAのXavierは、自動運転向けチップとして設計された 出典:NVIDIA(クリックで拡大)

 Mobileyeの当初の発表によると、EyeQ5は、消費電力5W未満で12TOPSの性能を実現するとのことだった。しかし、Intelの主席エンジニアであり自動運転ソリューション部門担当チーフアーキテクトを務めるJack Weast氏は先週(2017年12月4日の週)、EE Timesのインタビューの中で、「EyeQ5は、消費電力10Wで24TOPSの性能を実現可能だ」と説明している。

 Intelの広報担当者は、「EyeQ5の性能は、いつ、どのような方法で、突然2倍に向上したのか」とする質問に対し、「Intelは現在、数種類のEyeQ5を提供する計画を進めている。その中には、以前に発表した12TOPS品と、NVIDIAのXavierシリーズとの比較対象となっている24TOPS品も含まれる」と述べる。

 同広報担当者は、「24TOPSのEyeQ5は、2つのコアを搭載しているのか、それとも2つのチップをシステムに搭載しているということなのか」とする質問に対し、詳細を明かそうとはしなかった。ただ、「このレベルのTOPS性能をどのような方法で実現するに至ったかについては、コメントを差し控えたい。アーキテクチャやプラットフォームの詳細については、『CES 2018』で発表できる予定だ」と述べるにとどめた。

 一方でDemler氏は、「Mobileyeは、自動運転レベル4およびレベル5への対応を実現するために、EyeQ5を2個使用する予定だと語っていた」と述べる。

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