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あなたは“上司”というだけで「パワハラ製造装置」になり得る世界を「数字」で回してみよう(46) 働き方改革(5)(10/12 ページ)

» 2018年01月22日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

部下にも「度量」を持たせてみよう

 このシミュレーションで、当初の目的は達成できたのですが、私は、もう少し「遊んで」みることにしました。

 「もし部下の方にも度量を与えたら、どうなるか?」 ――です。その結果は以下のようになりました。

 この結果は、「使えない上司(=ガバナンス能力のない上司)」であったとしても、多くの有能で寛容な性格の部下に恵まれれば、組織運用が可能であることを示しています。

 しかし、前述したように、部下は単なる「サブシステム」なのです。部下に組織運用まで配慮させるような上司は、そもそも存在しなくても良いのですが、現実の世界においては、そのような「存在しなくてもよい上司」は、本当に多いのです*)

*)私、サラリーマンですので、これ以上の言及は差し控えます。

 ですから、「パラハラ」や「セクハラ」を問題化させないように毎日ガマンしている部下は、上司が壊し続けている組織を、一生懸命に修復し続けているようなものです。

 そして、「組織全体を考えて行動しろ!」というセリフを日常的に言い放つ上司は、そもそも、本来の自分の仕事を放棄しているのです。


 では、このシミュレーション結果を総括します。

(1)組織全体を適正に動かして利益を上げることを目的とする上司と、
(2)与えられた自己の任務を適正に実施することを目的とする部下と、

から成る、社会通念上、一般の職場環境を想定した私のシミュレーションは、以下のように、あなたに語っています。


あなたが職場でパフォーマンスを発揮できないのは、あなたのせいではありません。全てあなたの上司のせいです。


―― と。


 それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。

【1】政府主導の「働き方改革」の重要項目の1つである「労働環境」について考えてみました。

【2】今回も、政府の資料に記載されている「労働環境」では、もっぱら、在宅勤務などのテレワークに関する内容のみに言及されており、私は不十分であると感じました。そこで、今回は、「職場におけるハラスメント」についての検討と、職場のパフォーマンスを向上させる方法を検討するシミュレーターを作ってみました。

【3】わが国におけるテレワークの環境は完了しているといって良い状態でありながら、テレワークに対して忌避的なマインドを持っている人が多く、実際にテレワークを利用している労働者の数は絶望的に少ないことが分かりました(13%)。

【4】職場におけるハラスメントを、「社会悪」として単純に批判するのではなく、システム論を用いて、ハラスメントが発生するメカニズムを検討しました。そして、組織運用における「業務命令」と「ハラスメント」との間に、強い関連があることを明かにしました。

【5】ハラスメントに対抗する手段として、立法府と行政府が準備している法律、法令、公文書等の役割を明らかにした上で、しかしながら、それでも最終的には、ハラスメントの被害を逃れ、加害者に報復する為には、「自助努力」しか手がないことを解説しました。

【6】「パワハラは上司と部下の相性の悪さによって発生する」という仮説のもとに、シミュレーションを行い、その結果、職場における部下のパフォーマンスは、上司の能力よりも、上司の度量(人間性)で向上することを明らかにしました。

以上です。

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