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マイコン大手ルネサスの埋め込みフラッシュメモリ技術福田昭のストレージ通信(96) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(9)(1/2 ページ)

今回は、ルネサス エレクトロニクスのマイコン用埋め込みフラッシュメモリ技術「SG(Split Gate)-MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)」を解説する。

» 2018年03月30日 09時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

スプリットゲートとチャージトラップを組み合わせたMONOS技術

 国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前回は、埋め込みフラッシュIPの大手ベンダーであるSST(Silicon Storage Technology)のメモリ技術をご紹介した。今回は、マイコン(マイクロコントローラー)の大手ベンダーであるルネサス エレクトロニクスの埋め込みフラッシュメモリ技術をご説明する。

 ルネサス エレクトロニクス(以下はルネサスと表記)が開発したマイコン用埋め込みフラッシュメモリ技術を同社は「SG(Split Gate)-MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)」と呼んでいる。SG-MONOSの特徴は大きく2つある。1つは、スプリットゲート方式であること。もう1つは、電荷の蓄積に浮遊ゲート方式ではなく、電荷捕獲(チャージトラップ)方式を採用していることである。

 SG-MONOSのスプリットゲート方式トランジスタは具体的には、ワード線ゲート電極(選択ゲート電極)と、金属ゲート電極(メモリゲート電極)を横方向に並べた構造である。そして電荷捕獲(チャージトラップ)方式トランジスタは具体的には、シリコン基板と金属ゲートの間にシリコンの酸化膜(O)/窒化膜(N)/酸化膜(O)の3層構造を作ることである。3層構造の窒化膜(N)内に高密度の電子捕獲準位を形成する。

 SG-MONOS技術によるメモリセルトランジスタの書き込み(プログラム)動作と消去(イレーズ)動作は、以下のようになる。書き込み(プログラム)には「SSI(Source Side Injection)」と呼ぶホットエレクトロン注入技術を使う。セルトランジスタのソース電極とメモリゲート電極に高い電圧を印加することで、ホットエレクトロンを基板から窒化膜(N)に注入する。

 消去(イレーズ)には「BTBT(Band-To-Band Tunneling)」と呼ぶトンネリング技術を使う。セルトランジスタのソース電極にプラスの高電圧、メモリゲート電極にマイナスの高電圧を印加することで、絶縁膜のエネルギー障壁を実効的に低くして正孔を基板から窒化膜(N)にトンネリングさせる。すると捕獲準位の電子が正孔と再結合して消滅し、蓄積電荷が消える。

SG-MONOS技術によるメモリセルトランジスタの書き込み(プログラム)動作(左)と消去(イレーズ)動作(右)。出典:STMicroelectronics(クリックで拡大)
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